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アントニ・ローレンス 氏

Top向学新聞内外の視点アントニ・ローレンス 氏


アントニ・ローレンス 氏 
(早稲田大学理工学術院教授  英語教育センター長) 


優秀な博士こそ積極的に外へ  視野広げることで専門も深まる

――日本の大学における博士人材養成の課題点とは。
  現状として、研究を面白いと感じて博士課程まで行く学部生は極少数であるかもしれません。学部の最初から、学問や研究がどういうものかを全員に教えるプログラムが必要だと思います。学問の面白みとは、「指導教員から与えられた課題」ということではなく、自分の疑問が研究で解決できる面白みです。それをよくわからないままゼミに入り、指導を受けて動くだけになって研究から離れていく学生も多いです。研究スキルは早い段階で身につける必要があると思います。

――社会で博士の活躍の場が限られており、進学をためらう留学生もいます。
  日本では、ポストドクターにいくといっても母校に残ってしまい、視野が非常に狭くなるような気がします。教授も自分が面倒を見ていた博士学生は出したがらないですし、研究室の人数枠は限られているので受け入れたくても他大学からの人材はなかなか受け入れられません。
  海外では博士課程修了後は外に出ることはよくあることで、他国の大学院に行って修業したりするので視野が非常に広くなります。たとえ企業に行っても大学に戻ろうと思えば戻れますし、他の研究機関へも行けます。ドアがいつでも開かれているので出るリスクは少なく、いつまでも大学に残って世界が狭くなる印象はありません。日本では研究室を一回出てしまうとドアが閉まって戻れない雰囲気があります。博士を取れず企業に行こうとして失敗し、どこにも戻れず行き場を失う人もいます。近年では、社会人の大学院への受け入れが促進されていますが、課題が残されています。
  最近、大学院で他大学出身者を増やす動きもありますが、自校出身者数は減らさず留保しようとします。これはあまり意味がなく、「内部」と「外部」の壁を壊し、力のある学生は外に出してもいいと思います。優秀な博士学生こそ積極的に海外に出すことで、「あの研究室からこんなに立派な人が来た」と人材交流の良い循環が生まれてくるかもしれません。

――日本では博士はもっぱら大学教授の卵と見られる傾向があります。
  それもやはり、同じゼミにずっと所属することが問題なのかもしれません。海外の大学院では他のゼミで研究したりして、様々な分野の知識を融合して新しい知識を作り上げます。私の友人は理論物理を続けながら様々な研究プロジェクトに参加するうち、気が付いたら「眼科学」の研究をしていたそうです。様々な分野の知識を習得することで視野が広がり、オールマイティーになることで逆に専門分野への理解も深めることができます。一本道で専門分野だけを極めて将来大学教授になる人もいるかもしれませんが、そういう道を皆が望んでいるわけではないのです。


アントニ・ローレンス
1970年英国生まれ。マンチェスター工科大学(現・マンチェスター大学)卒業後来日。1993年岡山理科大学専任講師、2004年より早稲田大学にて現職。2002年英国バーミンガム大学にて博士号(応用言語学)取得。

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