Top向学新聞日本で働く留学生OBたち宋 暁非さん


宋 暁非さん(中国出身) 
(グロービス経営大学院 研究員) 


キャリア形成のストーリー必要
方向感のある留学生活を

  私の経験から言えば、留学生の就職は大体4パターンに分かれると思います。①現在の日本では人手不足が深刻なので、語学力が多少足りなくてもとにかく人がほしいから採用されるパターン(特に技術分野)②外国人ならではの語学力を生かし、貿易などで二国間の「架け橋」の役割を果たすパターン③外国人が持つ日本人と異なる発想や観点を活かし企業にイノベーションの種として採用されるパターン④日本語はもちろん、日本人とまったく同じ条件を満たし、採用されるパターン。
  これら4パターンのどれが一番良く、どれが一番良くないというわけではありません。企業は4パターンのうちのいずれか、或いは複合の期待があって採用しようと思っているので、この4パターンを意識することで、自分の期待と企業の期待をマッチングさせることが重要です。
  さらに重要なのは、自分が今どこにいるか(何ができるか)、将来は何をやりたいか、そのために何をしなければいけないか、「自分なりのキャリア形成のストーリーを時間軸で描くこと」だと思います。
  今ある自分の「現在価値」を最大化したいなら、例えば語学力を活かし架け橋の役割を果たせば良いかもしれません。しかし、自分の「将来価値」のことを考えれば、もっと魅力的なストーリーはあるはずです。キャリア設計にあたっては、今自分がやっていることがいかに自分の「将来価値」に貢献しているかがポイントだと思います。つまり、今している仕事を、次のやりたい仕事にどう活かせるのかということです。そう考えると、例えばアルバイトなどは、生活費や学費のためにする必要があるとしても、あまり日本語の練習にならないアルバイトは留学生にとってよくないと私は思います。多少賃金が低くても、将来を考えて、話せるアルバイトを選ぶべきです。
  以前日本企業で採用の仕事をしていたとき感じたのですが、留学生は来日時からキャリア設計があいまいな人が多いです。もちろん、自分も含めて学生時代のキャリア設計は多少甘かったかもしれません。しかし、様々な人と接触し、様々な本を読むことを通じて、自分は「こういう人間になりたい、だからこういう努力が必要」と考えて決めることが重要です。中国語ではこれは「立志」と言います。まだ学生だから「そんなことを考えなくてもいいのでは」という方へのアドバイスですが、20代前半でそういうことを真剣に考えた人こそ、うまく次のステップに進めるのです。
  自分を磨くためには、楽しいことも厳しいことも経験してみて日本を理解することが必要です。日本と日本人のことを理解し、良くないところは良くない、良いところは良いと素直に日本の方と話し合うことが重要です。そうできないならば形だけのコミュニケーションしかできません。
  日本語を使って本当に自分の思いが伝わるのかということは、就職活動のときの大きなポイントです。企業は採用時には人物、つまりその企業に適う価値観を有しているかどうかを見るわけです。そういった内容はいきなり準備できるわけではないので、やはり学生のときから意識して備えておかなければなりません。私の留学生時代に意識していたことは、「多くの人との触れ合いを大切にすること」、「多くの本を読み、勉強しつづけること」、「正しい価値観と志を確立すること」です。ぜひ他の留学生の方もなんでもいいので、3つくらい大事なことを意識し、方向感のある留学生活を送っていただければ幸いです。