向学新聞2010年6月号
知的財産推進計画2010を策定
(知的財産戦略本部)
コンテンツ版COE、関連留学生一万人へ
政府の知的財産推進本部は5月21日、コンテンツ産業の強化や知的財産の活用などを柱とする「知的財産推進計画2010」を決定した。各省庁の具体的なアクションプランや目標数値などを掲げている。
現状では文化産業の輸出比率は低く、うまくビジネスに結び付いていない。そのためコンテンツを核として海外から利益が入る仕組みを構築し、2009年に1・2兆円だった海外市場からの収入を2020年までに2・6兆円へと倍増させる。
具体策としては、コンテンツ人材の育成・研究を行う中核大学を支援し、国内外のクリエーターや志願者が集まるコンテンツ版COE(Center Of Excellence)を形成する。文部科学省は、専門学校、大学と産業界との連携による人材育成のモデルを今年度中に構築。2013年度までをめどに質の高い教育プログラムを開発し、人材養成に着手する。コンテンツ分野の外国人留学生は、約3000人から1万人にまで増やす。
さらに「コンテンツ特区」を設けて自由な創作活動を促し、新しいサービスや技術を試す国際的な場を創出する。
諸外国に対しては、日本のコンテンツの普及を妨げている規制の撤廃を強く働き掛け、アジア市場を確保する。そして、2010年中に模倣品・海賊版拡散防止条約(ACTA)の交渉を妥結し、加盟国の拡大を呼びかけて世界規模の保護の輪を広げる。
知財戦略の一環として外国人留学生を育成しようとする試みはすでに始まっている。経済産業省近畿経済産業局では2009年度、特に中国における模倣品対策とライセンス契約をテーマに、知財事務専門職を希望する中国人留学生の育成事業を行った。今後、知財ビジネスに携わることを希望する17名を対象に、法律・特許事務所の業務や、日本の商標制度などについて講義。さらに日中の商標調査や類似判断の実習を行った。また、中国人留学生の採用に興味のある中小企業及び専門家事務所と留学生による意見交換会を実施した。
参加留学生からは「調査方法を学べて有意義」「企業・事務所との話し合いの場を増やしてほしい」といった声が聞かれた。これを受け近畿経産局では、これから知財を学ぼうとする中国人留学生への啓発や、企業の留学生採用拡大に向けた啓発を行い、留学生との話し合いの場をさらに設けることを検討していく。
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