<向学新聞2010年6月号記事より>
日本のアジア拠点化目指す
産学連携で留学生・日本人を教育
経済産業省 クール・ジャパンを牽引産業に
経済産業省は4月23日、産業構造審議会・産業競争力部会の会合を開き、「日本のアジア拠点化総合戦略」について検討した。日本の立地競争力を高め、外国企業や高度人材の誘致を進める。人材育成に関しては、留学生・日本人が切磋琢磨する異文化マネジメント体験型のカリキュラムを産学連携で取り入れることを提案。日本企業の若手人材を海外現地に派遣するインターンシップ制度の創設なども掲げている。
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経産省産業競争力部会は、アジアで新興国市場が台頭し日本の競争力が弱まる中、「今後日本が何で稼ぎ、雇用していくのか」を議論する政策会議。産学官の21名のメンバーで構成される(部会長/伊藤元重東京大学教授)。アジアの成長市場を取り込むためには、まず人材の国際化を進めるべきとの観点から、大学や日本企業のグローバル化方策を提示している。
その一つが「産学連携による留学生・日本人の協働教育」だ。日本人・留学生の混成チームで議論を行う「知的格闘技」としてのPBL(Problem Based Learning、問題解決型授業)を、経産省の支援で運営。プロジェクトを共に成し遂げることを通じて異文化を理解したり、国を超えた協働作業の楽しさを知り、グローバルビジネスへの素養・関心を持つ人材を育成する。
また、「産学人材グローバル・インターンシップ」の創設を提案。日本企業の若手人材を海外現地企業やNPOなどに1か月~1年間派遣し、海外のビジネス慣習や多国籍人材の組織マネジメントなどを習得させる制度だ。
さらに、アジアの産学官のリーダー候補が集い、アジアビジネス戦略を研究する、人材育成拠点の設置も提案している。
これらの提案は、経産省の産学人材育成パートナーシップ・グローバル人材育成委員会(委員長/白木三秀早稲田大学教授)が4月23日にまとめた報告書を踏まえたもの。同報告書では、大学グローバル化のための外国人教職員比率の拡大を促したほか、企業の採用スケジュールの複線化や後ろ倒しによる外国人材の採用促進なども求めている。
また、4月5日に行われた第3回会合では、「クール・ジャパン」と称される日本の文化産業を、21世紀のリーディング産業へと繋げていく方策について討論。海外人材も積極的に活用しながらグローバル市場を開拓する強いチームを結成することや、官民に眠る人材・資金を結集し「コンテンツ海外展開ファンド」を創設することなどが提案された。また、世界中のクリエイターを日本に集め、日本のコンテンツ、ファッション、観光地などを活かした作品についてコンペを行う「ジャパン・クリエイターズ・ゲートウェイ」の開催を提案。あわせて、「大卒または10年以上の実務経験」が必要とされる場合もある就労ビザの制度を緩和し、クリエイティブ人材の受け入れ環境を整備することも提案した。
産業競争力部会では5月18日に、これらの横断的施策を盛り込んだ「産業構造ビジョン」の骨格案を提示。6月1日にとりまとめを行う予定だ。
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