<向学新聞2013年12月号記事より>
ベトナム人留学生4倍に
日本語教育機関への入学者
財団法人日本語教育振興協会(日振協)が11月、日本語学校(約400校)で学ぶ外国人留学生の在留資格認定証明書交付状況の推移をまとめたところ、2013年に在留資格を交付されたベトナム人留学生が1万1421名で昨年の約4倍だったことが明らかになった。
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近年ベトナム人留学生は著しく増加しており、日振協の調べでは在留資格の交付状況は2009年から約18倍になっている。日振協の木原哲郎専務理事は、「昨年の10月頃から急激に増加している」と話す。ベトナムには昨年の段階で1500社以上(帝国データバンク調べ)の日系企業が進出しており、就職を目的に日本語を勉強する若者も多い。一般財団法人国際教育交流フォーラムの堀江学理事長は、「ベトナムの若者は進学に熱心で、大学進学率は20%程に上っている。海外留学の状況は、米国へ約1万7000名、英国と豪州にそれぞれ約1万5000名、中国に約1万3000名となっているが、今年日本語学校に入学したベトナム人留学生の分を加えると1万5000名以上が日本で勉強していることになる。日本留学している韓国人学生数に迫ろうという勢いだ」と話す。
一方で、ベトナム人留学生の増加と共に受入れ面での課題も問題視されている。1980年代後半以降や1998~2003年に中国からの留学生が急増したが、偽造書類や出稼ぎを目的として留学ビザで入国するケースが目立ち問題となったことがあった。木原専務理事はベトナム人留学生についても、「同様の問題が起こりうる可能性はある」と指摘する。
しかし、2006年に日振協と中国の政府関係機関である教育部学位センターが、大学統一試験等の成績証明書など日本留学に必要な申請書類を認証し、直接日振協会員の日本語学校に送付する「認証システム」を導入したことで状況は大幅に改善された。認証システムは、①認証を中国政府関係機関である教育部学位センターが直接実施、②偽造防止のため特別な工夫がなされた証明書用紙を使用、③申請者や仲介業者を経由せず申請書類を入学希望先に直接届け偽造を防止できるといった利点があり高い信用性が保障されている。約330の日本語教育機関がこの認証システムを利用し、日本語学校関係者からは「(申請書類の)真偽確認として大変有効だ」と評価する声が上がっている。
これと同様の認証システムが日振協とベトナム教育訓練省との協定に基づいて2年前に導入され、約250の日本語教育機関が利用している。ベトナム教育訓練省の国際教育開発局が大学入学統一試験等の成績を認証し、証明書を日本語教育機関に直接送付している。
日本語教育機関の中国、韓国人学生が年々減少しており、そのしわ寄せが今後大学等の高等教育機関に及ぶのは必至だ。ベトナム人留学生の増加は新しい希望となるが、ベトナム現地での日本留学情報の発信や日本国内での対応が不十分という課題もある。今年5月、日振協や日本学生支援機構等がベトナムで日本留学フェアを実施し、ハノイで2100名、ホーチミンで2500名が会場を訪れた。また、11月11日に駐日ベトナム大使館と日振協が日本での生活や進路の指導を目的とした「日本語教育機関ベトナム人留学者合同オリエンテーション」を日本語学校のベトナム人留学生向けに開催し1100名以上が来場するなどし、ベトナム人留学生への更なるサポートの充実が期待される。
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