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検証 留学生政策(3)

Top向学新聞>2017年10月号

検証 留学生政策 


(3)「ポストグローバル」


震災が教えた日本の長所


日本で学ぶ意味とは



 前回記事では30万人計画の開始によって誘引から獲得へと留学生政策の力点が変化したことに触れた。世界のグローバル化の流れの中で、留学生を獲得していける日本の魅力とアイデンティティとは何だろうか。日本の強みとそれを生かした留学生政策のあり方について考えてみたい。



●9割が「日本で」


 2011年の東日本大震災の直後、国際留学生協会は留学生へのアンケート調査を行ったが、その結果は9割強が日本で勉学を続けたいと願い、理由として「日本が好きだから」「災害を通してやはりすばらしい国だと確信した」などの思いを吐露していた。震災時の日本人の行動に触れた影響は大きく、「冷静さ」「秩序を守る」「忍耐強さ」「団結力や責任感の強さ」など非常時にも落ち着いて対応する「日本人の行動」を「日本の長所」としてあげた留学生は6割以上にのぼった。同年4月の文部科学省の調査では実際に約9割が通学圏内に戻っていた。


 文科省は2012年3月に、世界42カ国・地域の学生214人が被災地や日本の現状を視察する「ジャパンスタディプログラム」を実施した。津波で流されそうになった旅館の女将が話す、「被災地に残ったのは人との心の繋がり、絆だった」「人を心配する気持ちは世界中同じだ」という言葉に多くの学生が共感し、彼らは帰国後様々な形で日本の姿を母国に伝えた。


 独立行政法人国際交流基金の調査によれば、2012年に世界の日本語学習者数は約398万人と過去最高を記録したが、2015年には中国や韓国などが大幅に減少し365万人と6年前の水準に戻った。それを反映するように中韓からの留学生数はここ数年伸び悩み、ASEAN地域の伸びが目立っている。


 アフリカや中東の学生の留学ニーズの強さは現地の日本留学フェアの活況から明らかだったが、留学費用の問題がネックとなり来日できる学生は少なかった。そこで安倍首相は2013年から「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアティブ」(安倍イニシアティブ)を打ち出し、アフリカビジネスの水先案内人となる若者1000名に大学で英語による経営学・農学・工学などの専門教育や日本語教育、日本企業でのインターンシップの機会を提供。JICA実施のプログラムで2016年9月までの3年間に821人が来日し、多くの修了生が現地の日系企業や機関で活躍している。


 こうした日本が強みを持つ分野を前面に出した戦略的な受け入れ政策は今後ますます重要になってくる。英語化を進め世界標準に合わせるだけではなく、日本語教育や日本文化の発信も充実させ独自性を発揮する真の国際化が日本の大学には求められている。



●世界に授業公開


 インターネット上で誰もが無料で受講できる講義「MOOC」を活用する動きが日本でも出てきている。大学は世界中に広がるオンライン教育システムに授業を提供することで認知度向上と入学志願者増、教育内容の質保証に活かすことができるし、逆にMOOCのコンテンツを利用することもできる。2014年10月には東京工科大学が国内大学で初めて、一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)の大規模公開オンライン講座を教材として取り入れ反転授業を実施した。反転授業とは、従来教室で行われていた基礎的な講義を動画で自習し、大学では議論や実験に集中して知識の咀嚼に努める教育形態だ。個人の習熟度に応じた反復学習が可能となる。


 MOOCの導入は教育内容を均質化させる懸念があるが、だからこそ逆に、オリジナリティある日本のコンテンツを世界に発信する好機でもある。静岡大は2017年4月から日本マイクロソフトと連携し、授業や教材の電子化を容易にする「クラウド反転授業支援システム」の本格運用をはじめた。動画を含む教材を高速に世界中へ配信する機能を備えており、システムの導入支援を全国の大学に拡大していこうとしている。


 コンテンツのオンライン化とシステム化の流れが注目されつつある中、日本留学の魅力とは何かが改めて問われている。グローバル、ボーダレス、ネットワーキングなどの旗印の下に進められてきた大学国際化の動きは単なるインフラ整備にとどまってはならない。世界から人を惹き付けるのは教育コンテンツと教育する人そのもの、また、習得した内容を生かせる場があることである。日本に留学に来ること、日本社会で人生の一部を過ごすことの意味が改めて鋭く問われ始めている。


・検証 留学生政策
(1)10万人計画達成前後  (2)30万人計画へ  (3)「ポストグローバル」



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