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向学新聞2019年9月1日号記事より>

改正入管法と日本語教育
- 問われる社会との連携 -


日本語教育は社会への架け橋

国は教育体制整備に本腰


 2018年12月に外国人労働者の受け入れ拡大を目指す「改正入管法」が成立、公布された。特定技能1号の外国人には日常生活上、職業生活上又は社会生活上の支援を行うことが求められ、日本語教育は重要課題の一つとなっている。さらに、超党派の日本語教育推進議員連盟が提出した日本語教育推進法が令和元年6月28日に制定されたが、今後この法律をどのように労働や教育の現場で具現化するかが課題となる。日本語教育と日本社会の持続可能性を、一体として考えていくべき新たな時代の局面を迎えている。



「語学を教えるだけでいいのか」


 5月24日に、大学日本語教員養成課程研究協議会(大養協)主催のシンポジウム『「改正入管法」と変化する日本語教育』が開催され、148人が参加した。日本語教育を推進する国会議員や外国人技能実習生の監理団体、外国人支援の専門家等が、現場の視点から問題提起や提言を行った。


 NPO法人グローバルサポートセンター代表理事の山下ゆかり氏は、「日本語教師は語学を教えるだけでいいのか」と問題提起。多国籍・非漢字圏からの学生が増え、借りたい物件を借りられず、契約書も理解できていない人からの相談があること。学生の進路指導が適切にされていない等の問題を指摘した。求められる日本語教師像としては、①対象者に合わせた幅のある日本語教育を考えキャリアアップを図れる②留学生に的確な進路指導ができる③外国人からの相談には専門家と連携して速やかに適切な対応をとれるといった内容を挙げた。


 協同組合エヌケーユー代表理事の又賀良子氏は、技能実習生事業から見た改正入管法と日本語教育について発表。EPA(経済連携協定)で受け入れた介護福祉士候補者の国家試験の合格率は、日本語N5で入国できるインドネシアとフィリピンが4割以下だったのに対し、N3で入国できるベトナムは93・7%と高かった。この現状から、来日後の半年程度は仕事の時間に日本語を勉強する仕組みを法制化して予算を施すよう提案。例えば雇用保険の財源等を活用して事業への講師派遣や給与助成をするといった仕組みを構築するよう提言した。


 続いて早稲田大学の宮崎里司教授は、介護関連在留資格と日本語教育の強化について発表。現在、介護分野では6種類の在留資格で外国人が働いているが、技能実習・特定技能で入ってくる外国人には、誤嚥等の介護事故が起きないよう専門の日本語教育を行えるようにするソフトインフラが必要だと述べた。また、技能実習には必ず入国時講習があるが、特定技能にはそれがないので、現場で働く力をどう身につけさせるかが課題だと指摘。内閣府と経団連、日本語教育関連学会の研究者で産学官プロジェクトを作り、オールジャパンでケアをしていく試みを提案した。


 NPO法人青少年自立援助センターの田中宝紀氏は、外国人の受け皿としての日本語教育のあり方について発表。日本語指導が必要な児童生徒のうち1万人以上が学校で何の支援も受けておらず、高校進学率が低く非正規での就職率が高い現状を説明した。


 その中で日本語教育に期待される役割は、外国人の受け皿となるよりむしろ受け皿の外に送り出し、迎え入れる架け橋の機能であると述べた。そのためには異分野との連携が必要で、例えば国内に約3千箇所ある子供食堂で日本語学習支援を提供していけば外国人が活用できる社会的資源が増えるので、それを広げるためのインフルエンサーになってほしいと訴えた。

画像の説明
発言するパネラー(右)と日本語議連事務局次長の里見隆治氏(左)



多様な日本語教育に横串を刺す新たな段階に


 最後に日本語教育推進議員連盟事務局次長の里見隆治参議院議員が、日本語教育推進法案について説明。基本的施策として、就学前の幼児・児童から留学生、社会人までを含むすべての日本語教育を拡充することを法律に明記した。この法的基盤によって予算を確保し、学校教育や地域に安定的に日本語教育を届けていく。すでに今年度の日本語教育予算は去年の約5億円から13億円へと大幅に拡充されており、国も日本語教育に本腰を入れ始めている状況だと述べた。


 今後の検討事項についても、確実に具体化するためにあえて条文の中に盛り込んだ。里見氏は、「様々な日本語教育を一つの日本語教育機関という括りで括って、教師、教材、評価手法、資格のあり方を一つの物差しで測っていけないかという問題意識を持っている」。「横串を刺す制度を作っていく新たなステージに入った。概算要求で次年度予算の議論に夏に入っていく」と述べ、国としての一元化した日本語教育の体制整備を推し進めていく考えを示した。



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