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<向学新聞2020年10月1日号より>
やさしい日本語ガイドライン
多文化共生の土台作り
優しい気持ちで、易しい日本語を
出入国在留管理庁と文化庁は8月28日、「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」を公開した。このガイドラインは、共生社会実現に向けてやさしい日本語の活用を促進することを目的とし、有識者会議によって検討し作成された。
やさしい⽇本語とは⽇本語が⼗分に理解できない⼈に対して、簡単な語彙で、短くはっきり話す⽇本語のことだ。1995年の阪神・淡路大震災の時に、外国人住民が情報弱者となり死傷者の数に影響を与えたことから、その必要性が注目されるようになった。各種研究会や大学の研究室などによって研究・普及活動が行われてきた。また、近年では平時においても自治体による外国人住民への情報提供や、外国人観光客への情報発信でも有用性が認知され用いられるようになってきている。
▼必要性
平時でもやさしい日本語が必要とされるようになった背景として、外国人の増加と国籍の多様化がある。他方で進められている情報発信の「多言語化」ではすべての言語をカバーしきれない。一方、簡易な日本語であれば多くの外国人が理解できるため、多言語化に加えてやさしい日本語の活用が求められている。また、自動翻訳ツールの利用においても、やさしい日本語を使うと、翻訳の精度が上がるという利点もある。2019年6月に施行された日本語教育推進法や総合的政策の中にも盛り込まれ、国が力を入れている。
▼内容
2020年2月から4回にわたって開催された有識者会議では、地方自治体の職員や外国人から、生活の中での具体的な事例の報告や要望のヒアリングと、各委員の専門を活かしながらの意見交換と共に、ガイドラインの検討が進められた。
ヒアリングに参加した外国人からは、「日本語をそのままやさしい日本語に置き換えるだけではなく、その後ろにある制度や文化的な背景も補って説明する必要がある。外国住民が日本でも自分の生活の主人公となるために、言葉は、自分が意見を言い日本社会や地域に貢献するための大切なコミュニケーションツールである」との話が出た。
今回のガイドラインは、書き言葉に焦点を当て、国や自治体が情報を発信する時に活用されることを前提として作られたが、学校や企業での活用も期待されている。
内容は、やさしい日本語に置き換える具体的なステップや注意点、書き換えツールの紹介、やさしい日本語への変換例がまとめられ、別冊として「やさしい日本語書き換え例」も公開されている。
有識者会議での委員の話に、「やさしい日本語の『やさしい』には、『易しい』と『優しい』の⼆つの意味がこめられている。『易しい』日本語を、相手に配慮した『優しい』気持ちで話すことが基本である」という内容があった。
言葉による誤解や意思疎通できないストレスが、共生の足かせとなるケースが多い中、相手に合わせて一工夫してやさしい日本語を使う「優しい」姿勢が、共生社会をつくるために日本人一人一人に求められる姿だといえる。
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