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元留学生

向学新聞2023年4月1日号記事より>

日本で働く元留学生たち

グエン トアン マンさん
(ベトナム出身)
貿易会社勤務

日本語で話す機会を増やそう
『ちりも積もれば山となる』

―日本に留学したきっかけは何ですか。
 
 私は小学校のころから海外留学をしたいと思っていて、中学校では英語を猛勉強しました。高校ではシンガポールに留学に行きました。日本に知り合いが留学していたこともあり、日本の独特な文化にも興味があったため、日本留学を決めました。

グエン  トアン  マンさん


―日本に来て、来る前のイメージとのギャップはありましたか。

はい、ありました。良い面としては、話では聞いていましたが、日本のお店の接客の細やかさはびっくりしましたね。これがおもてなしの心か、と。一方、ベトナムとのギャップでさみしく感じたのは、近所の人間関係がほとんどない点です。ベトナムでは、近所の人はみな知り合いで、名前も知っています。その人の子供や孫のことも知っています。日本はそのようなつながりがあまりないため、さみしいなと感じました。アルバイトも仕事が終わったら終わりで関係が深まる機会が少ないです。ベトナムは一人友達になったら、その人の周りの人もみんな知り合いになります。でも日本の人間関係の距離感にも慣れてきました。

―学生時代はどのように過ごしましたか

一番力を入れたのは、ベトナム人向けに無償の日本語教室を開いて活動をしていたことです。大学の協力を得て施設を貸してもらったり、日本人やベトナムの知人の協力も得ながら活動していました。その活動を始めたきっかけは、ベトナム人が日本人との間でトラブルが起きる原因は、日本語が問題となっている場合が多いと感じていたからです。日本語力がアップしたらもっと生活しやすくなると思ったからです。

また、家族がいない国での生活で、困ったことがあれば相談できるコミュニティを作りたいとも思いました。毎回20~30人のベトナム人が集まっていました。技能実習生や日本語学校生が多かったです。土日に集まる場があることをみんな楽しみにしていました。友達に会える貴重な場でした。

グエン  トアン  マンさん

グエン  トアン  マンさん

学生の時は、時間に余裕があったので、他にも在福岡ベトナム人協会の役員を務めて、フェスティバルの企画運営をしたり、様々なボランティア活動もしたことはとても良い経験でした。

―今のお仕事を教えてください。
 
大学を卒業してから、貿易会社に就職しました。また通訳の仕事をすることもあります。仕事以外にも、引き続きNPOの理事をやっているので、イベントを開催しています。日本語スピーチ大会の実行委員もしています。4月からはまた大学院に入って、ベトナム人コミュニティの課題とその支援について、研究をする予定です。

―後輩の留学生達にはどのようなことを伝えたいですか

留学生達に重要視してほしい事は、一つ目は日本語力です。日本語能力をある程度上達させないと、いつまでも自分の日本語に自信を持てなくて、同じ国の人のコミュニティの中だけで過ごしてしまい、日本に留学に来てもあまり日本社会とかかわりが持てません。自分から日本人に話しかけることを毎日少しでも努力すると良いです。アルバイト先や学校の先生、日本人学生など、チャンスは作れるはずです。

日本語能力については、実習生たちが困っているケースがとても多いのですが、会社の中で話す機会が少なければ、ネットの授業や、日本語で会話するグループもありますし、無料の日本語教室に行くなどして、日本人と話す環境に飛び込むことが必要だと思います。私も来日してすぐは日本語がほとんどできなくて苦労しましたが、毎日の積み重ねが大きく違う結果につながります。「ちりも積もれば山となる」ですね。

来日して最初の1、2年は、母国語を使わないようにして、見るニュースも、音楽も日本語のものにした方が良いと個人的には思います。ネットはとても便利ですが、楽でストレスがない母国語の情報にばかり触れていると、日本語を上達させる機会を失うことにもなります。JLPTのN1、N2を持っていても、話せるとは限りません。会話の学習が足りない人が多い印象です。学んだことを、アウトプットする機会・話すことが上達にはとても大切です。間違えても恥ずかしいことではないので、間違ったら指摘してもらって直せばいいのです。完ぺきな日本語で話すのは無理なので、相手に伝えたいことが伝わることが大事です。
 
もう一つ大切にしてほしいのは在留資格の事です。日本にいたいのであれば、きちんと日本の法や制度を守ってください。日本に来るベトナム人が増えていて、様々なコミュニティがあり、SNSでも多くの情報が飛び交っています。その情報の中には、良い情報もあれば、誤った情報や違法なことにつながる情報もあります。違法なことをして罰せられれば、後戻りできないので、十分に気を付けて下さい。

―今後の目標を教えてください

4月からまた大学院に入って勉強をし、その後は自分の会社を立ち上げるという目標があります。ベトナムや東南アジアの学生で、日本で学びたい学生たちの日本留学を手伝う事業をしたいです。

―円安や給与水準等の面で、アジア諸国での日本留学の人気が下がっているという話もありますが、マンさんはどのように感じていますか

母国への送金目的で日本に来る人にとっては、円安は大きな問題かもしれませんが、日本で学びその経験を活かして将来働きたいと考えている人にとっては、あまり影響がないのではと感じます。日本企業は円安の時期に、海外への投資や新たな拠点を作る動きもあります。日本に留学に来ることが、将来日本や母国の日系企業で活躍できる可能性を広げることにつながります。誰でも呼んでくるのではなくて、日本留学の魅力と必要とされる語学力などを伝えた上で、しっかりとしたモチベーションを持った学生を呼んできたいですね。そのような若者達が、将来日本と母国の発展に大きく貢献してくれると期待しています。



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