プロボノ 


プロのスキル活かしNPO支援  「仕事とは何か」を再認識

 今月は、プロボノの普及促進に携わる特定非営利活動法人サービスグラントの嵯峨生馬氏にお話を伺った。

社会人こそ力を発揮

――プロボノとは何ですか。
 嵯峨 ボランティアの一種ですが、単純作業ではなく、社会人が普段取り組んでいる仕事のスキルや経験を活かして、NPOなどの非営利団体を助ける社会貢献活動を指します。プロボノという言葉は「公益善のために」を意味するラテン語から来ています。
 日本人でボランティアに参加したいと思っている人は少なくないのですが、社会人は忙しいので、誰でもできることであれば誰か時間がある人がやればいいと考えてしまいがちです。プロボノは「今働き盛りのあなたにしか助けられない、あなただからこそ効果を発揮できる」というボランティアの形です。ホワイトカラーの能力が活かされないのはもったいない。ボランティアをするなら生産性の高いことをするほうが社会貢献の意義にかなっていると考える中でたどりついたのが、ビジネススキルを持った社会人とNPOをマッチングするサービスグラントというシステムです。
 参加者の基本単位は個人であり、現在、デザイン会社の方や新聞・雑誌の編集者、商社マンやコンサルタント、アパレル企業広報担当者など幅広い業種の440名が登録しています。WEB、印刷物などNPOが必要とする具体的な成果物ごとにプロジェクトを立ち上げ、登録者から5~6人が集まってチームを結成。週5時間程度、本業に負担がかからないように参加して頂いています。プロジェクト終了までの平均的な期間は約6カ月です。
 NPOと企業人という異質な両者がお互いにお金を介さずやり取りするため、プロジェクトはさまざまな失敗のリスクを抱えています。サービスグラントではプロボノが成功するために必要なマネジメントを行い、コンサルティングや実務運営をサポートしています。

――NPOと社会人それぞれにとってのメリットは。
 嵯峨 社会人にとっては、社外で一般の方と共に活動することで自分の「腕試し」をすることができ、実力を認識できるとともにさらなるスキルアップにつながるメリットがあります。また、普段は出会わない人たちと仕事をすることで人脈を広げられますし、NPOと接するので、普段見聞きすることがない社会問題にじかに触れることで見識が広がります。参加した方は、新聞の見方が変わったり、気にならなかったニュースも耳に飛び込んでくるようになったり、ニュースの裏側にあるものが見えるようになったりします。
 いっぽうNPOにとっては、WEBやパンフレットの制作になかなか人とお金を割けない中で、普段それを仕事にしているプロが来て、実費経費を除いたサービスと成果物を無償で提供してくれます。職種の異なる人々でチームを組みますので、1人では思いもよらなかった観点から貴重な意見が出てくる可能性があり、効果の高い成果物を手に入れることができます。それによってボランティアや寄付金が増えるなど具体的なメリットにつながるケースが出ています。DV対策の情報発信を行うあるNPOは、SEO対策が奏功し、検索サイトで2位になるという結果も出ています。

――プロボノの社会的意義とは。
 嵯峨 NPOにとって本当に必要なのは単なるお手伝いではなく、自分の意思で考えて動き、最後の成果まで生み出してくれるボランティアです。私はちょうどそれを実感していた時にアメリカでサービスグラントの仕組みを知りました。クリエイターが自分の作品を作るだけでなく、作品が実際にNPOにプラスの効果を与えている点に新しいボランティアの可能性を発見したのです。
 昨年主催したプロボノフォーラムを境に、日本での認知も高まってきました。リーマンショック以降、経済至上主義への反省の中で、皆さんが「なぜ仕事をするのだろう」「仕事の価値とは何だろう」と考え始めています。働き方を見直し、社会に役立つ仕事の在り方へと向かう中でプロボノが注目されているのではないでしょうか。活動に参加することで「仕事とは何か」を再認識するきっかけになると思います。



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