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日本型スマートグリッド 


太陽光発電の大量導入目指す  経済成長にも環境にも良い電力網

 今月は、スマートグリッドの研究に携わる東京大学の横山明彦氏と、早稲田大学の林泰弘氏にお話を伺った。



CO2排出を抑制

――まず早稲田大学の林泰弘先生にお伺いします。スマートグリッドとはどのようなものですか。
  電力ネットワークを通る電気の流れをICT(情報通信技術)を活用し、電圧と周波数を適正範囲内に保ちながら、エネルギー消費とCO2の排出量が最も少なくなるようコントロールする高度な次世代電力ネットワークです。
 日本型スマートグリッドの特徴の一つは、住宅用太陽光発電の大量導入を目指している点です。現在、日本の太陽光発電の総量は原発2基分程度ですが、2030年までに原発約40基分まで導入するという目標が福田内閣当時に掲げられました。ただ、太陽光発電は天候に左右されるために不安定です。従来の電力ネットワークは発電所から各家庭へと一方通行で電気が流れる前提で設計されていますが、太陽光で発電した電流がネットワークを逆流した場合、近隣家庭のコンセントの電圧が、安定範囲とされている95V~107Vの範囲を超えてしまう恐れがあります。そのため太陽光発電は電圧が107Vを越えようとすると止まるように設計されており、本来もっと発電できるのに止まってしまう場合もあります。
 そこで我々は、早稲田大学が有する世界有数の次世代電気エネルギーシステム模擬実験装置「ANSWER」を用いて、電圧が太陽光発電出力の変動に応じて一定範囲内に収まるよう自動で上げ下げできるシステムを開発しています。この装置には住宅までの引き込み線があり、家庭用太陽光発電や蓄電池、家電を含めた模擬実験が行えます。パソコン一台ですべてを制御でき、発電量が激しく変動してもすばやく追従して、電圧が許容範囲から出るのを防ぐのです。

――スマートグリッドで可能になる未来の社会の姿とは。
  電気とICTがうまく融合した、経済成長にも環境にも良いエネルギーネットワークの実現を目指しています。まず、30分ごとに双方向で電気の流れを測る「スマートメーター」を各家庭に導入することで、電気の情報を「見える化」します。住民には時間帯ごとの電気料金を見せ、昼間は割高に設定することでピーク時の電力使用量を削減できます。その日の天気に合わせて「今日は乾燥機を使わずに外で洗濯物を干す」といった省エネのアドバイスや家の中の電力使用量の制御を行うHEMS(home energy management system)の実現にもつながります。また、スマートフォンなどを用いて家電を遠隔制御できるようになり、帰宅途中に部屋のエアコンを早めにつけておくといったことも近い将来には可能になるかもしれません。


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