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邵 丹 さん (中国出身) 
(東京大学大学院) 


村上春樹作品に衝撃 目標は中国語で新翻訳全集

――日本語を学ぶきっかけは。
 来日前は、上海外国語大の高級翻訳学院で学んでいました。翻訳というよりは通訳がメインで、国連の通訳員を養成する所です。いろんな業界に呼ばれて通訳をしましたが、一方で多方面と関わる割には特定の専門分野に深入りできないので虚しさを感じていました。そんな時に出会ったのが、村上春樹の小説でした。中国でも大変人気があって、なぜそんなに人気があるのか不思議に思い、英語版の『ノルウェイの森』を読んでみました。すると、面白かったので興味を持ち、それなら原語で読みたいと思って日本語を独学で勉強し始めました。日本語の『羊をめぐる冒険』(村上春樹)に衝撃を受けて、それ以来村上作品を日本語で読み続けました。

――東京大学で学ぶきっかけは。
 村上作品を読むうちに、日本に行ってみようと思い立ち日本の大学を調べていくと、東大の柴田元幸教授が村上さんと長年交友があると知り、ぜひそこで学びたいと思いました。私の学部時代の専攻は英米文学でしたが、柴田教授の研究室では比較文学を扱っていて、アメリカ文学と日本文学を比較研究しながら村上文学も深く学べると思いました。

――村上作品のどこに惹かれましたか。
 日本に来る前のことですが、海外では日本に対するステレオタイプがありました。サムライや芸者など。ところが村上作品には、それがない。新しい新鮮な日本が描かれていて、文体的にも私のような日本語初心者にもわかるような表現で書かれていました。そして、表現がおしゃれですね。中国や台湾では、若者の1つの形容詞みたいになっています。ファッションや振る舞いがおしゃれだと「今日はムラカミだね」というように言ったりします。

――今後の目標は。
 今は修士2年で世界の文学を比較研究する研究室に所属していますが、村上文学はまさに世界的文学だと思います。できれば博士課程に進んで、比較文学研究と村上作品の研究を続けたいですね。将来的には大きな目標があって、村上作品の新しい中国語の翻訳全集を出したいと思っています。現在出ている中国語訳は村上さんより年上の方が訳したものなんです。どちらの翻訳が良いかではなく、若者の言葉で村上作品を表現することで、読者に多様な選択肢を提供できると思います。機会があればチャレンジしたいです。



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