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東北アジア環境協力研究会第2回

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テーマ「発展観と幸福観の転換」
シリーズ第2回(向学新聞2009年6月号掲載)

日中バイオマス促進事業を提案

シリーズ発表

まちづくりに貢献するバイオマス産業創出を
ナレンチムゴ
株式会社森のエネルギー研究所


  内モンゴル自治区は大草原に象徴される豊かな自然が息づく地域として名が知られている一方、近年草原退化と砂漠問題が著しい環境問題となり、牧畜業が成り立たなくなっています。なぜ砂漠化が起こっているか、草原の砂漠化については、近年数多くの研究がなされているものの、人口増加、草地の開墾、減反政策、過放牧,薪木伐採,気候変動(強風,干ばつ)といった一般的な要因の指摘に止まるものが多く、これら要因はどのような社会的・経済的背景の下で砂漠につながるのかという点については十分に解明が進んでいるとはいえません。
  内モンゴル自治区は民族地域であり、地域主産業である牧畜業の振興と経済発展が遅れている内陸地域「西部」に含まれており、経済成長の急務を抱えております。こういった地域民族文化の継承と経済成長、環境問題を解決するため、内モンゴル自治区は重層な困難を乗り越えなければなりません。
  ここでは、内モンゴル自治区における諸課題を分析する際、牧民、牧畜業、牧区という「三牧問題」と国の先行政策などに着目します。牧民の問題は教育資質、労働条件、収入の低さです。次に牧畜業は収益と生産性が低いため経営・産業化・持続的な発展が問われています。最後に牧区は環境悪化により放牧地の利用と維持管理の問題があります。かつて自然と共に暮らしてきた牧民生活は砂
漠化の影響により成り立たなくなり、牧民の貧困問題が拡大しつつあります。先行政策は、環境悪化地域の住民を移転させる「生態移民」、昔の放牧型から定住型へ転換する「定着型牧畜業」と「退耕還林還草」の政策を取り、政策実施により、一時的に環境改善に至りました。しかし、移動先でも牧民が放牧して環境悪化を引き起こし、定住型畜舎の高額な建設費用が生活水準の下落をもたらし、牧民による盗牧や夜間放牧などが行われました。どちらも抜本的解決には至っていません。
  以上の課題を踏まえながら、課題解決の方向性として、地域の特性を生かし、バイオマス産業の可能性を提議したいと思います。環境へ与える負荷が小さく地産地消(地元で作り、地元で使う)であるとともに、地域のまちづくり(新規産業・雇用創出、産業振興、交流基盤強化、教育、福祉、環境保全等)に貢献するバイオマス産業創出の新たな方策を、産官民の三者による協議によって導き出す地域コミュニティの編制と環境人材の育成、さらに地域住民への環境教育普及啓発に繋がっていくのです。


<砂漠化問題は貧困問題>
――李 現在の内モンゴル砂漠化の直接的な原因は、通常の木を植えても育たないということ、仮に育ったとしても放牧の管理の甘さでヤギなどに葉や草の根っこまで食べられ成長できないということにあります。しかし、農民はそんなことは気にとめていません。根本的な原因はやはり貧困の問題であり、貧困で彼らはまともな教育を受けられず環境保護という意識を持たせることが不可能です。目の前にあるものは食べてしまう、使ってしまうというのは人間の本能であり、なくなれば別のところに移住するかそこで我慢します。彼らは5~10年先の中長期のことは考えられないのです。また、昔の先進国と途上国の関係と同様に、中国では経済が発展している沿海地域と内モンゴルのような内陸の貧しい地域との関係においても、裕福な地域が貧しい地域からただ同然のように資源を利用するという構図が存在しています。
――古賀 内モンゴル自治区の人口構成で漢民族が約8割になっています。これは中央政府の漢化政策のようなこともあってこういう比率になっているのだろうと思います。主産業は牧畜業となっていますが、この漢民族の8割の人々はどんな職業についているのでしょうか。
――ナレン 漢民族は牧畜業を営んでいる人は少数で、農業やほかの職業を行っている人が多いです。

<地域コミュニティの編制を>
――古賀 私の問題意識は、地域コミュニティの編制とコミュニティレベルでのバイオマス促進事業を実践する主体がどこになるのかということです。自治区には、そのコミュニティ形成によって漢民族の人々とモンゴル族の人々の関係性がどういう形になってくるのかという繊細な問題があります。もしもモンゴル族を主体にする場合、自治区全体の人口8割を占めている漢民族を除いた事業というのは少しバランスがとりづらいのではないでしょうか。
――ナレン その点においては、私は地域コミュニティの編制という形を考えていて、単なる民族という単位での考えではありません。もっと大きな「地域で生活している人々」をテーマとして考えています。
――李 本当に貧しいところや環境が悪化しているところでは、民族が混在していても共通の問題意識を持っていけば、そのようなコミュニティ作りも可能でしょう。コミュニティをつくる理由は、あくまでそれに属する皆の生活をより良くするためです。それを作るためには何か一つのツールが必要です。やはり、彼らにとって目に見えるもので将来性のあるもの、頑張った分、自分により高い付加価値を提供してくれるようなツールでなければ机上の空論になります。バイオマスという潜在的資源を有している地域であれば、きちんとそれを使って新しい産業として育成し、その産業によってコミュニティを皆がより協力的に結んでいくことができれば、それがコミュニティ作りの一つのヒントになるかと考えます。
――池田 循環型だった遊牧民の生活に、グローバリゼーションがもたらした影響は大きかったと思います。幸福観の転換というこの研究会のテーマからすると、バイオマス技術の導入だけでこの問題の解決を考えるだけでは不十分ではないでしょうか。
――ナレン 確かに大きかったのはグローバリゼーションの影響です。近年、中国の高度経済発展と共に起こっている環境問題は都市部だけでなく内陸地域にも起こっています。前回のシリーズ発表(李海峰氏)にあったように、地方でも都市のような発展を目指す動きがあり、その点は内モンゴルも同様です。
――李 今後内モンゴル地域の成長を見込んでいる人は多いでしょうから、現在はお金がなくても5~10年先までの開発計画を明示すれば、国ではなく民間からの投資も十分にありうると思います。

<中国のマンパワーを活用>
――宮川 私は去年の七月に山西省大同市に行って植林活動をしてきました。見渡す限りの荒野に人の手で植林しているのを目の当たりにしたとき、「人間の力は凄い」と感じました。これまで、中国、インド、中東、東南アジアなどでスクラップ&ビルドという壊して新しいものをつくる、技術は目にしてきましたが、植物を植えて、緑化する力を初めて体験しました。今まで砂漠緑化に関しては少しあきらめていたのですが、しっかりした仕組みさえあれば、植林も現実的であると考えるようになりました。バイオマスを利用して砂漠に緑をつくる技術も同様と考えます。
――李 中国にはマンパワーがあります。毛沢東時代に4億人の「人海戦術」を用いたように、人が集まれば何でもできる勢いはあるのです。ですから、日本は人手を使わないような技術開発に力を入れていますが、これを内モンゴルに持っていく際には、多くの雇用を生み出すことも考えて技術を導入する必要があると思います。
――宮川 そこで必要となるのが、政策や仕組み、自然保護を行ってきた今までの歴史的過程といったソフト面の導入です。事業が広がっていく過程で、資金不足、法律面のトラブルなど様々な壁が生じてくると思います。そのときにお互いにやりとりする中で、ソフト面の力で壁を取り除いていくのです。お金が足りなければファイナンスのつくり方を考えたり、事業計画が立てられなければその立て方を日本から学ぶなど、そういう形で必要なノウハウを活用していくというのが成功の決め手だと思います。
――宮川 次回、私は中国の国際循環という観点から、都市に関する発表をしたいと思います。


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