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日本への提言1711

Top向学新聞日本への提言>王雲海 氏

留学政策は日本語ベースで

日本発大学ランキング創設を


一橋大学 大学院法学研究科 教授
王 雲海 氏


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おう・うんかい
 1982年中国西南政法大学法学部卒。1998年一橋大学博士(法学)。一橋大学助教授、ハーバード大学客員研究員を経て2003年より現職。専門は比較刑事法。


今こそ日本語による留学生増を


――現在の日本の留学生受け入れについてどうお考えですか。


 一橋大学では留学生は増えていますが、交換留学の短期留学生が多いです。東大でも京大でも同様の傾向があり、数値目標に合うような増え方をしています。


 日本に来ても英語で学び、日本語を話せない留学生は本当の知日派・親日派にはなりにくいのです。質の高い中身のある留学生を育てるには英語だけでなく日本語もマスターさせる二本柱で行わなければなりません。英語だけでは人材として活躍の場が狭くなり、留学生にとって二流の人生しか確保できず日本が良い留学先になりません。本当の親日家養成に日本語教育は不可欠であり、今こそ日本語による留学生を増やすべきなのです。


 中国は各国の大学に孔子学院を作ってかなりの予算を投入しています。日本もそれ以上に、例えば「和の学院」を世界に作って野心的にソフトパワーを拡大していくよう取り組むべきです。政府主導でベトナムやネパール、ヨーロッパに日本語学院を増やせばもっとたくさん人は来ると思います。


――アイデンティティを明確にして世界に打って出るということですね。


 私は中国にもアメリカにも良く行きますが、アメリカは英語をベースに留学政策を展開しています。日本も言葉をベースにしないと日本としての留学生政策のメリットが出てきません。中国がなぜ孔子学院を作ったかといえば、まさにTOEFLの試験から得た示唆なのです。日本という国が影響力を発揮するには日本語をベースにするべきで、そこは政策決定者が理解すべき点ではないでしょうか。


 世界大学ランキングについてですが、ハーバード大学の関係者と話してみると大学ランキングを上げようとは思っていないのです。つまりアメリカの大学は自分の大学が一位のときはそれを宣伝材料として使い、下がれば無視します。ランキング自体が一つの戦略で、自分達の教育を世界の中で優位に保つため、さらに言えば留学生を呼び寄せるためのものなのです。その戦略を見ないで日本が無理やりにあわせようとしていますがそれは良くないです。


 中国の上海交通大学も大学ランキングを出していますが、私が上海交通大学の関係者と話したとき、彼は「大学ランキングは貨幣を作ることと一緒で、作った人が得をする」といっていました。まさにその通りだろうと思います。


 私は今、大学と文部科学省が中心になって日本発の大学ランキングを作ったらどうかと提言しています。5年前にも文科省に提言しましたが反応がありませんでした。「それをしなければ日本は受け身のままで後悔しますよ」といってきました。日本の大学評価は客観的なので世界での信頼性は高いです。今の英米のランキングよりも信用されるでしょうし10年経ったらかなり権威的なものになると思います。文科省がイニシアティブをとって至急作るべきです。



教員が研究に集中できる環境が必要


――世界の中で見た日本の大学の良い面と課題点とは何でしょうか。


 まず教員が研究に集中できる環境の整備は依然として課題です。研究予算について日本は米国と比べてあまりにも短期的な成果を求めすぎています。そのため教授が助成金の申請作業と研究内容の説明に振り回されています。もっと研究成果自体を作り出すことに重点を置けるようにすべきです。


 政府は大学に自己努力で外部資金を獲得するよう促していますが、日本の企業は必ずいつまでにどんな成果を出してくださいと求めます。いっぽうアメリカの企業は、科学研究は営業とは違って未知の真理を探究するものなので、必ず結果が出るという前提は合わないという発想です。日本では政府も企業もお金を出せば一年後成果が出るという前提ですから、継続して資金を獲得するためには一年でどれだけ成果が上がったか無理にでも言わなければなりません。


 日本は大学改革が多すぎです。常に競争的資金の獲得に労力が費やされ、安定した心境で研究できる環境ではなくなっています。東大や京大の先生、ノーベル賞を取った先生に聞いても皆同じことを言っています。文科省は補助金を出すから申請しなさいといいますが一年に5、6回の申請に大学の皆が振り回されています。外部資金を獲得した教員が学内で評価されますが、大学がいくら金持ちになっても研究成果が無いと意味がありません。


 もともと、英米と比べても安定して確実に勉強できるのが日本の研究室の強みでした。性急に短期の成果を求めずに研究させていた明治以後の教育政策は世界でも最高だったと思います。それがこの2~3年で企業家たちに影響されて駄目になっているのが心配です。国家権力に携わる人は短期的な成果を優先させるあまり国家を企業化してはならないのです。ノーベル賞を取ったような先生は、お金をもらったから成果を出さなければいけないといって取ったのではありません。国が企業のやり方で競争力を求めていけばかえって競争力をなくしてしまいます。


 民主国家の国の安定、国の一貫性を保つのは官僚体制です。その官僚が作り上げてきた良いものをグローバル化の名のもとに壊していっています。明治以降の教育の良いところを活かすような発想が必要です。日本は官僚の力をもう一度重視して強くしてほしいですね。





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