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向学新聞2021年1月1日号記事より>


懐かしい幼少期と現在の幸せ 

谷口ジョゼー眞一郎さん(ブラジル・サンパウロ) 

谷口ジョゼーさん

 私は満78歳、1942年生まれのブラジル人日系二世です。サンパウロ市は海外で最も日系人が多い都市ですが、日本人が移民制度を始めてからもう112年経った今日、3世、4世と進んでいるため、日本語は滅多に喋る機会がありません。そのため、何かの役に立てるため、退職してから再び日本語の勉強に取り組んでみました。
 
 幼い頃は、私の人生で最も幸せかつ人格形成に多大な影響を与えた時期であったと思います。

 住んでいる家は非常に質素でした。土壁で、タクアラ竹やユーカリの幹を針金で結んで築いた基礎に泥と茅を混ぜたものを塗ったものでした。屋根もユーカリの細い幹の上にサペー(茅)をかぶせたものでした。扉もなく窓には木の雨戸もなく、ただ小麦やコーヒーの袋で作った厚手の布が吊るしてあるだけでした。床も土間で、塗装もされていませんでした。水道もなく、電気もなく、お茶を沸かすために水が必要になると近くの湧き水を汲みに行かなければならないところでした。顔を洗うためにも桶に湧き水を汲まなければなりませんでした。日 が暮れると小さな布でできた芯のある灯油式ランタンとランプで明かりを取りました。ランタンはガラスで覆われており屋外に持ち出しても風で火が消えることはありません。ランプの方はガラスの囲いがなかったため、家の中でしか使いませんでした。

 そういう環境で暮らした私は現在の裕福な生活と比べれば73年間に言うまでもなく鋭い変化を体験しました。幸せは一体何だろう。経済的なものとは全く関係ないと思います。幸せは自分の心が満たされている限りどんな生活をしていても幸せになれると実感しています。



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