Top向学新聞日本で働く留学生OBたちタッサポン・ブンヨンさん


タッサポン・ブンヨンさん(ラオス出身) 
(ABB株式会社) 


日本企業は新人研修が充実
就職活動は専門分野にこだわらず

  私は日本での就職活動にはかなり力を入れました。留学生の皆さんにアドバイスするとすれば、新卒の留学生の場合は日本企業では即戦力にならない場合も多いので、しっかりとした教育体制を備えている会社を選んだほうが良いということです。就職活動中は社員教育のことまで考える余裕はないかもしれませんが、入社後にそれは実感できると思います。
  もっとも、海外の企業と比べると、日本企業は新入社員研修がしっかりしているほうだと思います。友人に聞くと、海外では大学で研究してきた内容をそのまま使える人でなければ採用されませんし、入社後にはすぐに現場の仕事を任されます。日本では「実際の入社は先なのでとりあえず内定を出しておく」というやり方で、新卒人材の専門知識についてはあまり問われません。会社側は、学生がどれだけ学校で勉強して良い成績をとってきても、入社後には一から勉強しなおすので関係ないと考えています。だからこそ充実した教育体制を備えているのでしょう。逆に、海外ではそういった教育体制がないので、電気の仕事なら電気専攻の人しか採りませんし、実際にその時点で仕事がなければその専攻の人は採りません。
  日本では採用面接の時点で、応募者は自分の将来のビジョンや入社後に希望する仕事、その仕事に携わりたい動機などを伝えます。しかし会社のニーズは日々変動するので、入社後に必ずしも自分がしたい仕事に就けないケースも発生するようです。内定後実際に働き始めるまでに最大1年程度もの期間がありますので、その間にどう変わるか分からないのです。
  ですから逆に言えば、「会社を選ぶときには絶対自分の専門と合致する職種でないと応募しない」という人が多いのですがそういう考えはやめて、もう少し就職活動の範囲を広げていったほうが良いと思います。大学や大学院で学んだ内容が企業での仕事にそのまま通用するとは限りませんし、専門にこだわるほど応募できる企業は限られてきます。仮に応募して内定をもらっても、入社後に100%自分がしたいことをさせてくれるという保証はありません。もし自分の専門と全く違う部門に配属されたら、やる気をなくしてしまう人もいるのではないでしょうか。「したいことしかしない」という考えを持っている人がそのような状況になればショックは大きいと思います。しかしそれはその考え方のほうに問題があるのです。元来、会社というものは組織ですので、各自がしたいことだけしていては成り立たないものなのです。
  確かに日本の採用システムには問題もあるかもしれません。学生が在学中に企業が採用活動を行い、内定を出してしまうような国は他にはあまりないと思います。海外ではみな卒業証書を持って会社を訪ねるのが普通です。しかし卒業前に仕事が約束される点では、日本のシステムは留学生にとってむしろありがたいと思います。他の国の場合は何ヶ月も仕事が見つからず、勉強もしないし仕事もできない状態が続くこともあるようですが、それはかなりの時間のロスです。留学生の皆さんはこのような事情をよく理解して、広い視野と柔軟な考えを持って就職活動に取り組んでほしいと思います。