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張 振亜 氏 
(筑波大学大学院  生命環境科学研究科助教授) 


留学生が民間友好の発展に貢献  日本人との交流は将来の財産に

 ――日本の留学生受け入れの課題と、今後目指すべき方向性について。
 日本の大学では留学生に理解のある先生に留学生が集中する傾向があり、一方でまったく留学生を受け入れていない先生もいるなど、アンバランスな状態です。今後文科省が留学生受け入れの方針を立てるに際しては、受け入れるメリットがどこにあるのかを明らかにし、それを日本人にもっと積極的にアピールしていく必要があると思います。今後10~20年のスパンで見た場合、研究活動の質の向上と産業の発展にとって留学生が本当に重要な人材になるということを、まずおさえておく必要があるでしょう。
 例えば、今私は日本学術振興会の拠点大学交流プロジェクトに参加しています。参加大学は日本側が筑波大、新潟大、日本大、千葉大など、中国側が北京大、清華大、南京大などですが、中国側のどの大学にも元日本留学生がいるので意見交換や交流が非常にスムーズに行えます。このことを知って日本人の教授たちは、将来留学生が信頼できる大きな人脈になると感じたようです。すでに国際交流を展開している教授たちはその重要性を十分認識しており、受け入れた留学生を非常に大事にしています。
 私は今年の春節に筑波大で行った留学生との懇親会で、学生たちへの励ましの意味も込めて、民間友好のために尽力した偉い先輩方をパネルで紹介しました。筑波大だけでも、毛沢東の恩師で後に北京大教授になった人や、日中友好協会副会長で毛―田中会談の時に仲立ちとなった方などがいます。この事実を見れば現在の日中友好に留学生がどれだけ貢献しているのかよくわかります。留学生を積極的に受け入れて育て、日本社会に溶け込んでもらった上で卒業してもらえば、将来お金で計算できないほどの大きな利益をもたらす人材になるのです。
――その意味で留学後のフォローアップは大切ですね。
 それこそ最も重要なことではないでしょうか。例えば大学が卒業生の同窓会を立ち上げれば各国とのネットワークができ、各大学の同窓会が一つ一つつながれば大きなネットワークに膨らんでいきます。そして年に1回ぐらいディスカッション等を開催し、各分野の第一人者とのネットワークができれば、それを通じて日本にとって有益な仕事を展開できるようになるでしょう。
 民間交流の力は、中国にとっても今後ますます大きくなります。王毅大使がいみじくも「留学生一人一人が民間の大使であり、さらに深く交流して日本社会の中に溶け込み、民間友好を確立してほしい」と語っているように、留学生が民間友好の発展に果たす役割は非常に大きいものがあります。
 その意味では、せっかく留学したのに日本人とあまり交流しないまま卒業してしまうのはもったいないことです。私は年始には留学生に「共通語としての日本語を習得してほしい」、「日本の習慣を守ってほしい」と言うことにしています。そうしないと日本になじめず、結局自分が損をするのです。そして「できるだけ多くの日本人と友達になってください」ともアドバイスしています。日本で成功した人はみな、よく日本語を勉強し、よく日本人とつきあって友人をつくっています。彼らの人生にとっては、学位を取ることよりもむしろそういう経験こそが大事なことなのではないかと考えています。研究室でもアルバイト先でも多くの友人を作って交流すれば、それが後々大きな財産となる可能性があるのです。


ちょう・しんあ 
1957年中国生まれ。82年河北工業大学卒、95年筑波大学大学院博士課程農学研究科で農学博士号を修得。筑波大学助手、同講師を経て、05年12月より現職。筑波大学で留学生アドバイザーを5年間務めた経験を持つ。