TOP>ビジネス日本語研究会
向学新聞2021年7月号目次>ビジネス日本語研究会
<向学新聞2021年7月記事より>
第31回ビジネス日本語研究会
「ビジネス日本語教育の現状と展望 ―求められる日本語教師像」
当研究会は、2010年5月に日本語教育学会のテーマ領域別研究会として発足。主に日本語教育に携わる日本語教師によって構成され、外国人に対するビジネス日本語の研究・実践を進め、支援体制を築いていくことを目的に、年に数回研究会を実施している。
第31回となる今回は、「ビジネス日本語教育の現状と展望 ―求められる日本語教師像」をテーマとし、6月12日にオンラインで開催され、海外及び国内から約70名の会員が参加した。
講演内容から一部抜粋
●コロナの留学生への影響
マイナス面:
・業界・企業によっては採用活動はコロナ前の水準 に回復(インバウンド業界は低迷)
・日本語で会話する機会が減って日本語能力の低下や伸び悩み、人や情報との接点が減り個人差が顕著に
・理系が有利、文系が厳しい状況がより顕著に
プラス面:
・Web説明会、面接の利用の機会が増加して交通費・ 移動時間などの負担が小さくなっている
・外資系や半導体関連業界など留学生に対して積極募集中の企業もある
●企業で必要とされる日本語とは
流暢・美しい日本語≠ビジネスで使える日本語
・5W2Hを意識した発話
・要約力、話のポイントは何か?
・簡潔に話す力
・一貫した論理構成
⇒明快にわかりやすく話す
前半の講演では、林洋右氏 (株式会社リクルート HRエージェント Div. マネージャー)と山内政樹氏 (ICI代表取締役社長)による採用市場や日本語教育の動向についての話があった(右図)。後半のパネルセッションでは、日本語教師がキャリアコンサルタントの資格も取り、留学生を日本語と就職の両面で支援する可能性について話題に上がった。両方の資格を持つ参加者からは、「二つの資格を持っているが、現在は両方を活かして活躍できる場がない」との現状の課題が寄せられた。また、今必要とされる事について「越境」というキーワードが出た。今までの価値観や自分の専門分野にとどまらず、他とも連携をしなければ、前例がない事態や変化の早い状況に対応できない。パネラーの淺海一郎氏(内定ブリッジ株式会社代表取締役)は、「立場を超えてどこにどのような価値を提供できるか、今こそ日本語教師は真剣に考える必要がある」と述べた。代表幹事の奥田純子氏は終わりの会長挨拶で、日本語教師の存在意義・価値について、「普遍的な価値と、時代と共に変化し時代と共に生きる新しい価値を考える時であると感じる」と述べた。
1983年に留学生10万人計画が打ち出されてから38年、来日する留学生は増加・多様化し、留学生を取り巻く日本社会も大きく変わってきている。コロナの影響で日本語学校や日本語教師は大変な局面を迎えているが、他分野との対話や連携の中から、新たな活躍の可能性が見いだされることが今後期待される
a:1719 t:2 y:1