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留学生の就職支援
 第2回 企業の視点、大学の視点 対談①

栗原由加 氏

栗原由加 氏

神戸学院大学グローバル・コミュニケーション学部 教授

谷口慎吾 氏

谷口慎吾 氏

エバオン株式会社人材開発部
神戸学院大学グローバル・コミュニケーション学部外部講師
IFSA指定就職相談員

 留学生の就職促進・支援について、大学と企業の連携の必要性が指摘されるようになって久しい。今回は、栗原氏と、企業の採用担当者であり留学生の就職支援に長く携わってきた、エバオン株式会社の谷口氏から、インターンシップの意義についてお話を伺う。(以下、敬称略)

キーワード
・インターンシップの目的は「行く こと」ではなく「変わること」
・教室と職場の価値観のギャップ
・価値観の経験

―前回のお話で、栗原先生は「インターンシップの目的は『行くこと』ではなく『変わること』」だと仰いました。

栗原)私は神戸学院大学グローバル・コミュニケーション学部で、1期生が3年生になった5年前から、毎年インターンシップを担当しています。インターンシップは2か月間にわたり、必修の授業として全員が参加します。このような長期かつ全員参加という方法は、文系の外国人留学生のインターンシップとしては、珍しいと思います。
 
 谷口さんには、この1期生のインターンシップの時から、毎年お世話になっています。私は、最初の頃は、インターンシップ先を探したり、学生が毎日遅刻欠席をせずに出勤して、インターンシップを無事に終えられるようにサポートすることで精いっぱいだったのですが、谷口さんのインターンシップの様子を見学させていただいたり、学生への指摘内容や学生の様子を詳しく伺う中で、インターンシップの意義や、大学の役割について考える機会をいただきました。また、インターンシップを通じて、学生の考え方や行動が「社会人」に向かって変わっていくのを目の当たりにしました。その中で、インターンシップは、学生が大学では学べないことを学ぶチャンスであり、学生がインターンシップで学んだことを学生自身のキャリアにつなげられるようにすることが、教育機関が行うべきサポートだと考えるようになりました。

谷口)そうですね、学生気分のままでインターンシップに臨む学生には、何がどういけないのか、それはなぜか、誰かがきちんと教えなければいけないと思います。数日間に及ぶインターンシップでは、途中で脱落してしまう留学生も毎年いると聞きます。90分の授業や1日だけのインターンシップと違い、数日間にわたって行うインターンシップでは、途中で脱落してしまう留学生も毎年いると聞きます。集中力が持たないのかもしれません。
 
 また、今はインターネットが便利なので、留学生の中には、母国のメディア情報や自分の興味のある情報ばかりに触れていて、体は日本で生活していても、本当の意味で日本社会と接点を持てていない、持とうとしていない学生がいるのは残念です。学生のうちは、それでも困らないのかもしれませんが、就職となるとそうはいきません。就職先の国の人たちと毎日一緒に仕事をするわけですから、その国への理解や人とのつながりは大切です。留学は、知識を得るだけではなくて、留学先の人と実際に接することで、留学先の国や地域の価値観を知ったり理解したりする良いチャンスです。そういうことも学生に伝えています。

―大切なことは何か、学生と社会人の価値観にはギャップがありますね。

栗原)そう思います。教室の中での評価のポイントと、職場の中での評価のポイントは、必ずしも同じではありません。また、学生は、教員に対して見せる顏と、インターンシップ先で見せる顏が違うケースもあるので、同じ学生でも、教員による評価と、インターンシップ先での評価とが異なることがあるのも、インターンシップを実施する中で分かったことの一つです。企業目線で学生を見てもらった上でいただいたフィードバックは、とても貴重な情報です。それを学校側が、どれだけその後の指導に反映させられるかがポイントだと感じます。

谷口)確かに、企業が価値を置いているポイントと、学生自身が大事に思っているポイントが異なっていると感じることはよくあります。学生の中には、いかに要領よく格好よくやるか、自分が目立つかということばかりを意識していたり、相手の話の全体の趣旨を理解していないのに、「でも~」と自分の主張をしたり、自分の考えと違う意見にひっかかったりする人がいますね。

 私は自社でのインターンシップとは別に、これまで多くの留学生の就職支援を行ってきましたが、良い企業から内定を取れる留学生とそうでない留学生の違いは、普段のやり取りの中でよく分かります。内定を取る留学生は、普段から日本人との関わりを持っていて、日本人との間で心動かされたエピソードを持っています。また、他人への気遣いができたり、相手のことを理解しようとする姿勢があります。自分と違う意見や反論を受けても、しっかり受け止める人です。逆に、自分の殻から出ようとしない人、これまでの自分の考えに固執しすぎる留学生は、就職活動も苦戦するケースが多いと感じます。

―価値観のギャップの克服には、何が必要なのでしょうか。

栗原)学生が、社会の価値観を知る機会を増やすことではないでしょうか。価値観というのは、言葉で理解させられるものでもありませんし、強制するものでもありません。だからこそ、日本で働くことを考えている留学生には、日本で働く上での価値観に触れる機会を提供することが、必要だと感じます。文系の新卒採用の場合は特にそうですが、仕事は一から教えてもらうことばかりです。人の役に立つ人材になるためには、職場である会社の考え方や仕事の進め方、人との接し方も学んでいく必要があります。そのような、企業が大事にしているそれぞれの考え方や価値観を、インターンシップ等を通じて経験するわけです。その経験が、将来の進路選択を考える時の判断材料になります。

谷口)そのためにも、先ほど述べたように、会社では通用しないということがあれば、きちんと指摘する必要があります。指摘することで、意識が変わり、取り組む姿勢がぐっと良くなる留学生もたくさんいます。留学生だからと、見過ごしてしまえば、本人はいつまでも気づけないままです。

栗原)谷口さんは、本気の指導をされているのがありがたく感じています。反対に、インターンシップ先でも学校でも、留学生をいつまでもお客様扱いしていると、本当の企業の価値観に触れる経験をすることができません。学生の価値観のまま会社に入ってしまうと、本人がギャップに苦しむことになります。

―なるほど。インターンシップは、会社の雰囲気や業務内容だけでなく、会社が大事にしている価値観を経験することに、大きな意味があるのですね。

谷口)留学生には、本人が納得のいく内定を獲得してほしい、良い社会人になってほしい、という思いでアドバイスをしています。その中でインターンシップは極めて貴重で有効だと思います。

 実習期間中にお世話になる企業の方々や他大学のインターン生とも、是非、積極的に交流して頂きたいと思います。「実習が終わったら、はい終わり」じゃなくて、出来るかぎりその後も、何等かの関係で人間関係を深め継続していってほしいです。それは私生活におけるアルバイトでも同じことです。「学校は勉強だけするところ」とか「アルバイトでも時間内に業務をこなすだけ」と考えるのではなく「関わったすべての方々に心を開いて接する」ことで皆さんの人生が大きく開けると思います。

 インターンシップで体験し学んだことをどうか財産として学業に私生活に活かし、人間力を高め真にグローバルに活躍できる人材となって頂けるよう心から願っています。頑張って下さい。私もずっと皆さんを応援し続けます。

・留学生の就職支援
 第1回「現場から見える課題」
 第2回 企業の視点、大学の視点 対談①
 第3回 「仕事ができる人」とは? 対談②
 第4回 対談③在留資格の注意点
 第5回 対談④キャリア相談とは

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