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向学新聞2022年1月号目次>留学生と企業の橋渡し ASIA Link小野朋江氏

向学新聞2022年1月記事より>

留学生と企業の橋渡し
アジアリンク株式会社
代表取締役 小野朋江 氏

 創業から10年を迎え、外国人留学生と採用企業のより良いマッチングを追及し続けるASIA Link。代表の小野氏にお話を伺った

小野朋江 氏

―起業のきっかけを教えてください
 以前は、日本語学校と専門学校で、6年ほど日本語教師をしていました。自分がやりたかった仕事で、毎日留学生と接することができるので、とても楽しく仕事をしていました。日本語学校は進学したい留学生が多いのですが、何人かは就職を希望する留学生もいて、彼らから就職活動についての相談を受けることがありました。進学以外に就職という進路もあるのだなと気づき、「自分に何ができるか」と考えました。日本語学校としては、進学についての支援体制はありますが、就職支援の体制はほとんど整っていなかったので、一教員として、学生と一緒に就活について調べたりしました。

 しかしその時は残念ながら就職が決まらず、みな帰国することになってしまいました。その時に、日本で働きたいのに、ここまで日本語が話せるのに帰国しないといけないなんて、と彼らを思う気持ちと、優秀な人材を帰してしまっていることは、日本にとってももったいないことだと感じました。
それがきっかけとなり、留学生と企業をつなげることができないか、つなげる場が必要だと感じ起業することにしました。

―御社の社長ライブは大変興味深い企画ですね。
 ありがとうございます。求人企業の社長が直接来て、会社に興味を持つ留学生とグループ面談をするイベントで、企業・留学生両方から好評です。これを企画したきっかけは、合説をやった時に、社長自ら企業ブースに来て会社の説明をしている企業が、他の会社に比べて内定率がとても高かったのです。理由としては、一つは社長自ら人材採用の最前線に来ることで、留学生採用への本気度・スタンスがダイレクトに留学生に伝わるところです。もう一つは、社長が直接「きみいいね!うちにこないか」と口説くので、留学生の応募意欲が高くなります。

 学生にとっても、最初に社長に会って直接話せる機会はなかなかないです。従業員数や資本金といった数字の情報からではなく、会社の人との出会いから興味を持てる良さがあります。

―参加者の感想はいかがですか。
 企業からは、経営視点を持った学生が集まり、率直なストレートな質問を積極的にする学生が多いという感想が多いです。儲かっていますか、なんで社長になったんですか、など、いい意味で空気を読まず、飾らないやり取りが見られます。人事担当者で話しにくいようなことも、思い切って話す社長も多く、分かりやすいと思います。
 
 学生からの感想は、社長の話を直接聞けたのが良かった、という声が多いです。社長の話す言葉なので、信頼でき、本気度を感じるようです。その場に社長が来ていること自体が、留学生採用の意思表示、スタンス表示になっていますね。

―定着率についてはどのように感じていますか。
 元留学生たちの離職には、本当にいろいろな理由があって、様々なケースがあります。これが良い、といった答えのようなものはまだつかめていないです。

 ただ、私の出発点は、留学生が好きで始めたことなので、彼らの人生に、点ではなく線で関わりたいとう気持ちがあります。ですから、私個人としては、必ず1社でずっと勤め上げることが必ずしも良いとは思いません。彼らが幸せに活き活き働けているか、というところが気になります。

 社会に出て数年働いてみて、違うことがやりたくなったり、次のステージにステップアップしたくなることや、ライフステージによって帰国したいと思うときも来るかもしれません。人生長いですから。企業の採用支援をしている立場でもあるので大きな声では言えませんが、転職や帰国をえらんだとしても、幸せであればいいなと思っています。私と同じような思いで、「うちの会社を辞めた後もつながっていようね。個人としてこれからの活躍を応援しているよ。」と言って、転職する社員を送り出してくれる社長さんもいます。

―新卒留学生の就職について、どのような課題を感じますか。
 留学生が就職活動の時点で達しているレベルに対して、企業側が求めるレベルがとても高いと感じます。そのギャップがあり、内定まで行きつけないケースが多いと思います。企業からは、日本語も、専門性も文化適応力もとても高いレベルが求められ、最近は更に基準が上がっているように感じます。

 来日して数年の間に留学生が達することができるレベルか限りがあると感じます。でも数年で飛躍的に伸びている子が多いので、きっと、入社までと入社後も短期間で伸びてくれるはず、と伸びしろを見てもらえたらと思いますが、企業側も余裕がないとリスクを取れないという判断になります。

 企業側も悩ましいところです。日本人も離職率が高くなっているため、「見極め」には苦労します。留学生だとなおさらです。実務経験があると、明確な判断材料となり分かりやすいのですが、新卒ではそれがないですからね。
企業側も、3~4ステップで正社員を決めないといけないのは大変です。
企業側に、採用の背中を押すような、判断材料や具体的な事例を提供して、入社時にはこのくらいのレベルがあれば大丈夫だと、柔軟に判断してもらえる道があればいいなと思います。

―今後のビジョンをお聞かせ下さい。
 創業から10年たちました。これまでは、企業と留学生とのマッチングを夢中で走ってきました。時間が経ち、サポートした留学生たちの、入社後の様子が見えてくるようになり、どんな人が、良い仕事との出会いをして、活躍しているのかが見えてきました。

 仕事が、本人のアイデンティティ、目標や夢、とつながっている人は、活き活きと活躍しています。自分の強みを活かしたり、やりたいことを会社と共にやれると、社内で自分が唯一無二の存在になっていくと感じられるようです。そのような、より良い出会いのマッチングをしたいと、強く思うようになりました。

 一つは、海外ルーツであることを活かせる海外営業や国際業務に特化したマッチング、もう一つは専門を生かす技術職のマッチングです。この二つの分野に特化した支援ができるプロを目指したいと思っています。スタッフと更に勉強をして、やりたい仕事に出会える機会と、内定に至れるサポートを提供していきたいです。出会える機会と、内定に至れるサポートを提供していきたいです。

 
<参考>
株式会社ASIALink

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