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日本文化の底力

お笑い輸出課プロジェクト
藤田ゆみ / Ko(吉本興業) 
最終回 「お笑いの可能性」

KO氏
KO氏

ゆみ氏
藤田ゆみ氏

―お笑いを通じて語学を学ぶ授業が、大学や日本語学校で好評ですね。

ゆみ)そうですね。お陰様で定期的に呼んで下さる学校もあり、留学生たちと楽しく学んでいます。漫才では、言い間違いネタが多く、留学生ならではの間違いあるあるも面白いです。例えば最近の面白かったものでは、ビルとビール、ショートケーキと消毒液、大切な話とわいせつな話などがありました。

 アクティブラーニングの形式なので、一方的に話を聞くだけの授業よりも、自分たちで考える楽しさがあります。
私はスペイン語ができるので、南米出身の留学生が多い学校では、スペイン語と日本語で同じ発音でまったく意味の違う言葉をネタにした漫才もとても盛り上がりました。
「バカ」はスペイン語の「牛」、「あほ」は「にんにく」、「ダメ」は「ちょうだい」という意味になります。

―多くの留学生と接してきて、留学生の強みはどのようなところだと感じますか。

KO)バイトをやりながら空き時間にも日本語を勉強していて、いつ遊んでいるのかな、と思う留学生が多かったです。目的意識が強いと感じます。まじめで、工夫しながらお金を切り詰めて生活していますね。僕の元相方はフランス人でしたが、日本のお笑いが好き過ぎて来日し、ホームステイをして、情報収集をし、一旦帰国してお金を貯めて再度来日して、NSCと日本語学校に通っていました。

ゆみ)グラフィックデザインやイラストレーターなど、クリエイターを目指す留学生も多いですね。私は、日本のアニメが海外でこんなに人気があるとは、留学生と授業をするまで知りませんでした。アニメをきっかけに日本に興味を持つ留学生がとても多いです。日本語学校から大学院進学を目指す子も多く、留学生の頑張る姿からたくさんの刺激をもらっています。

―多文化共生社会の魅力はどのようなところでしょうか。

KO)そうですね、日本はとても安全で、人に迷惑をかけないようにする意識が高いところがありますが、反面ダメなことはダメと寛容さに欠ける面も感じます。
あ、私事ですが、先日結婚しまして。

―それはおめでとうございます!

KO)ありがとうございます。それで、日本の結婚式は、誰を呼ぼうか、何人がいいかとすごく考えて計画しますよね。僕が以前滞在していたセネガルでは、誰かの結婚式があれば、ご近所さんから友達、そのまた友達などがわーっと集まってきて、楽しい雰囲気で飲み食いしてお祝いしていました。形式ばらず暖かみがあって、あちらのやり方を良いなぁと思うところがあります。どちらの文化の方が良いとかではなくて、それぞれの良いところがあるので、お互いがその良さを体験できると、視野が広がると思います。
 
 僕が青年海外協力隊で、一緒にセネガルに行った時の先輩は、自分の子どもが中学生になった時にセネガルに連れて行って、1週間現地においてきて、修行させていました。日本では経験できないことを、実体験を通して学んで吸収したようです。

―日本にいながら異文化に触れられるので、日本人にとっても留学生との交流は貴重な経験になりますね。
―お笑いに秘められた可能性とは。

KO)違う国出身の留学生がコンビを組んでネタを考える機会が多いのですが、それがお互いを知る良いきっかけになっています。笑いのツボが違ったり、同じツボもあったり。
 難しいことを考えずに、一緒に笑える時間はとても楽しいですよね。気持ちが解放されて、心の距離が一気に縮むと感じています。

ゆみ)そうですね、笑いは国や性別を超えられて、暮らしを楽しくすると感じます。面白いことはみんな大好きです。

KO)日本人学生と韓国人留学生のペアや、日本人学生と中国人留学生のペアも、楽しそうにネタを考えているのを見て、政治的にはなかなか越えられない国同士の壁も、個人レベルでなら超えていけるなと感じます。まさに草の根の活動ですが、お笑いの新たな可能性を感じ、これからも楽しく活動していきたいと思います。

 最後に、学校の先生方、ご興味があればぜひ授業に僕たちを呼んでください!
 留学生の皆様、僕もそうでしたが、留学してから人生の視野が驚くほど広がりました。そして他の人がしないような色んなチャレンジをできるようになりました。1度きりの人生、今を精一杯生きて、沢山経験を積んで、人生を謳歌してください!!みなさんといつかどこかでお会いできることを楽しみにしています!!

ゆみ)留学生の皆様へ。日本で学ばれている、皆様のことを尊敬しています。日本での生活を楽しんで下さい。
 もし、日本語学校でお会いすることがありましたら、一緒に漫才を通じて日本語を笑いながら勉強しましょう!

(敬称略)

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