Top>向学新聞21世紀新潮流>LED


LED 


長寿命、高いエネルギー効率  国レベルでの省エネ効果に期待


 今月は、LEDの普及促進に努める、特定非営利活動法人LED照明推進協議会の松本稔氏にお話を伺った。

第4世代の光の出現

――LEDとはどのようなものですか。
松本:「光を発生するダイオード」の頭文字をとったもので、電気を流すと発光する半導体の一種です。LEDは日本オリジナルの技術で、炎、電球、蛍光灯に続く第4世代の照明として期待されています。
  基本的な原理は20世紀初頭に発見されており、炭化珪素に電流を流すと発光することが確認されています。現在のような技術が確立されるのは1960年代以降のことで、光の三原色(RGB)のうち赤色と緑色が最初に開発され、70年代に黄色、90年代には日本のメーカーによって青色が開発されました。 この青色の開発によって1996年に白色の開発が可能となり、それまで表示用が中心であったLEDは一般照明用として開発が進むことになりました。
  青色LEDを開発したのは日亜化学工業にいた中村修二先生(現カリフォルニア大学バークレー校教授)で、先生が基本特許をつくり、日亜化学や豊田合成が量産化して商業ベースに乗せました。先生は青色LEDの開発研究の途中、何度も困難にぶつかりながらもあきらめずに研究を続け、30年もかかって開発を成功させたのです。

――LEDの特長について教えてください。
松本:メリットとしてはまず、長寿命、高輝度、そして衝撃に強い点です。具体的には蛍光灯の4倍、電球の40倍である4万時間もの寿命があります。そして、明るいため遠方からでもよく見えます。また、電球とは異なりフィラメントや電極がない構造なので振動があっても壊れにくく、車や自転車のライトにも使われています。

――そのほか具体的な用途はどのようなものがありますか。
松本:LEDの交通信号機が使われています。これは従来の電球式信号灯器に比べてエネルギー効率が格段に高く、消費電力量は車両用で6分の1、歩行者用で5分の1程度に削減されます。仮に従来の電球式の交通信号機をすべてLED化した場合の日本全国の省エネルギー量は、年間9・35億キロワットとなり、原油換算では年間22・8万キロリットル、大型タンカー1隻分もの石油量となります。また、従来の信号機は電球が切れると困るので、寿命が来る前に電球を一斉交換しています。LED信号機なら万一LEDが一粒切れても信号の機能自体には問題がなく、一斉交換を行う必要はありません。
  これら環境面での利点に加え、LED式信号機の光は横から見えずまっすぐ進むため、見切り発車を防ぐ効果があります。また、従来の信号機では、レンズ内部に西日が進入して赤なのに青に見えたりする「疑似発光」が起こることがありますが、このような危険な現象が起こりにくいのです。こうした安全面のメリットも備えており、都市部の自治体を中心に導入が進められています。
  そのほか応用分野の例としては、イカ釣り漁船の集魚灯があります。イカは青い光に寄ってくる習性がありますのでライトを点けるのですが、船の上だと塩水や揺れの問題があります。LEDは防水加工が簡単で衝撃に強いため、水銀灯や電球よりも利用しやすく、長寿命によるコスト削減効果で原油高による燃料代の高騰の問題も解決できるのです。
  LEDに最も期待されるのは国レベルでの省エネ効果です。白色LEDは現在、蛍光灯に代わる照明としてオフィスや住宅で使用され始めています。政府は「地球温暖化防止のために電球を蛍光灯に変えましょう」という国民運動「チームマイナス6%」を実施していますが、これは特に一般家庭をターゲットに展開しています。今後LED照明の効率性が改善されていき、いずれ政府もLEDの普及を新たな国民運動にしていってくれれば有り難いと思います。