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低炭素型次世代交通 


公共財としてのEV普及後押し  自動車会社と共に低炭素都市造り


  今月は、低炭素型次世代交通の実現を目指す、横浜市の関森氏と黒田氏にお話を伺った。


EV都市のモデルを
――低炭素型次世代交通とは何ですか。
関森 電気自動車(EV)を活用し、CO2排出を抑える新しいゼロエミッション型都市交通システムです。政府の「環境モデル都市」に制定されている横浜市ではその実現に向け、日産自動車とともに「ヨコハマモビリティ〝プロジェクトZERO〟」という協働プロジェクトを推進しています。EV中心の都市モデルを構築して普及につなげ、温室効果ガス全排出量の20%を占める運輸部門の排出量を限りなく抑制しようという試みです。
  具体的にはまず、運転記録をホームページに入力して競い合うエコドライブコンテスト「E―1グランプリ」を実施しています。日産のカーナビシステムを応用したエコ運転診断装置を用い、燃費やCO2排出量を推計します。参加は日産車に限らず、既に500人以上が登録頂いており、環境に配慮した経営に関心の高い運輸業者にも参加を頂いています。エコカーに買い替えるコストをかけずとも、少しテクニックを磨けば地球温暖化対策になるのです。車載機ではその人の走り方まで分かり、なぜその燃費になったのか、どこで余分なエネルギーを使ったかが分かるのでスキルアップできます。
  さらに、渋滞改善に役立つ経路案内システムの実証実験を行おうとしています。今、日本では渋滞状況を確認するセンサーは幹線道路にしか付いておらず、仮に全車両にカーナビがあっても脇道の渋滞情報はわかりません。そこで発想を変え、走っている個々の車に取り付けたセンサーから「停止」「時速10キロ」といった情報を自動的にセンターに発信しようというのです。そうすれば脇道のどこが渋滞で、それをどうよけて走れば速くたどりつけるのか分かります。皆がその情報を共有すれば道路の取り合いをせず有効活用でき、渋滞が改善するのです。また、カーナビを用いない人にもこうした情報をパソコンや携帯電話で提供することで目的地に着くには何時に出ればよいかわかる「車の時刻表」の開発も行う予定です。
  さらに、市民がEVを安心して使える環境を整備します。ガソリン車は満タンで4~500km走り、スタンドが各地にありますので安心して給油しながら長距離移動できますが、現行のEVは走行距離が160km程度しかなく、補給インフラも整備されていません。そこで横浜市では200Vの廉価で使いやすい倍速充電スタンドの整備を始め、市内ではコンビニエンスストアのローソンの駐車場と横浜ベイクォーターという商業施設に付けて頂いています。2009年度は100基程度に約半額の補助を行います。

――長距離は乗れないEVは都市でこそ効果を発揮しますね。
関森 その観点から、都心部でのカーシェアリングなど、EVの共同利用サービスの普及策を検討しています。必要な台数が集まれば、横浜の中心部では電気自動車や自転車、徒歩のみの「カーボンゼロエリア」が実現するという構想です。こうしたモデルケースが日本全体に広がっていくことで、運輸から発生するCO2をゼロにすることが狙いです。
  実際、みなとみらいのあるマンションでは住んでいる方の多くがマイカーをお持ちではなく、カーシェアリングを好んで使っています。お金持ちで最先端のインテリの方たちがマイカーに乗らない実態があり、あと十年もしない間にマイカーと車庫を持たない生活へと変わってしまう可能性があります。

――そこでEVを公共財として位置付けた交通社会を作ろうと。
黒田 車の使い方自体を変えていかなければなりません。今後確実に人口は減少傾向にありますが、経済は人が動くことで活発化するものですから移動の量自体は減らしてはならず、なおかつ人々の「持たない需要」にも対応していかなければなりません。ならば街の中で公共財としての乗り物を利用できる環境をもっと作っていくべきです。都市側としては徒歩や公共交通や自転車を使いやすい街づくりをしていますが、一方で坂のある地域や子育て・荷物運搬などでの自動車の必要性は否定できません。街づくりの中で自動車はこれからどういう位置づけであるべきなのか、自動車メーカーと一緒に考えていこうとしています。
  車をEVに変えること、車の走らせ方を変えること、街の中での車の使い方を変えること。この三つの「変える」を総合的に進め、低炭素化の基地としての都市づくりに取り組んでいきたいと考えています。



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