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早稲田大学国際教養学部 


三段階の「早稲田メソッド」  国際的に活躍できる人材育む

夢が現実になる

 「高校3年生の時に思い描いている人生とは、全く違う人生を切り拓くことができると、力を込めて皆に言いたい」。早稲田大学教養学部を経て、アメリカのロースクールに進学した卒業生が、オープンキャンパスに来た高校生達に語ったメッセージだ。近々ニューヨークで弁護士になる予定で、「今までは非現実的で夢の世界のように感じていた将来が、国際教養学部で学ぶことで現実になった」とも語った。この卒業生は帰国子女でも、バイリンガルでもなく、日本の高校を卒業した普通の日本人だが、同学部を経て、大きく変わった自分の姿に胸を張る。
 2010年度の国際教養学部の就職先には、三菱東京UFJ銀行、楽天、野村証券、三菱商事、住友商事、アップルジャパン、エミレーツ航空を始めとして、日本の大手企業やグローバル展開する企業が並ぶ。学生が心から満足し、成長する理由はどこにあるのだろうか。


早稲田大学の改革
 
 早稲田大学国際教養学部は2004年に新設された学部であるが、誕生の背景を知るには、1990年代から始まった早稲田大学全体の改革に目を向けなければならない。  
 昨今の、世界規模での企業の人材獲得競争、大学の学生獲得競争の激化が、早稲田大学を改革へと急がせた。現在の社会的評価やブランド力に安住することなく、世界の一流大学と対等に闘っていかなければ、いずれ「早稲田」というブランド力も低下してしまう。その為、改革すべきポイントとして焦点を当てたのが、教養教育、国際言語である英語能力、コンピュータスキルの向上だった。
 具体的な取り組みの一つとして、英語能力の養成のために3段階からなる「早稲田メソッド」を導入した。第1ステップは「チュートリアル・イングリッシュ」と呼ばれる、ネイティブの外国人講師、あるいはネイティブレベルの日本人講師1人と最大4人の学生から構成される少人数制の英語の授業だ。レベル別にクラス編成し、英語で授業を行い、「話す」、「聞く」といった力を徹底的に身につけることができる。そして第2ステップとして、身に付けた英語を海外の学生とのディスカッションで実践できるのが「CCDL」だ。インターネットを使い、中国、韓国、台湾などの海外の学生と英語で議論を交わす。さらに第3ステップでは、同じ分野を研究する海外協定大学の研究者や学生と、テレビ会議システムなどを利用し、議論・研究を行う「サイバーゼミ」と、世界で活躍するリーダーや研究者から直接レクチャーを受ける「サイバーレクチャー」が準備されている。このように、全学生に対して、国際人になる道を提供する全学的な改革が行われた。


国際教養学部の誕生
 
 このような流れの中で、2004年に国際化の砦として誕生したのが早稲田大学国際教養学部だ。森田典正学部長は、「早稲田大学の学生は、語学能力や海外経験といった国際性の面で弱い部分があった」と述べる。そこで同学部は、英語での授業や海外留学の必修化、留学生の受入れを柱とする国際的な拠点として構想・設立された。学部の共通言語は英語であり、ほぼ全ての授業が英語で行われる。また、日本語を母語とする学生は1年間の海外留学が義務づけられており、約30カ国に及ぶ早稲田大学協定校から留学先を選ぶことができる。カリフォルニア大学バークレー校、ワシントン大学、オックスフォード大学、清華大学、シンガポール国立大学などの世界の一流大学に毎年500名以上の学生を送り出している。また、海外からも毎年約200名の交換留学生を受け入れており、その出身校は、オックスフォード大学、ケンブリッジ大学、コロンビア大学、北京大学などの世界的な大学が名を連ねる。正規学生も世界40カ国・地域から集まっており、約3000名の学部生のうち約900名は正規の外国人学生で構成されている。
 しかし、国際色豊かな環境であっても、外国人留学生や元々語学が堪能な学生のためだけの学部ではない。同学部の佐々木ひとみ事務長は、「学生にとって、この学部が初めて経験する国際的な環境であったとしても、卒業する時には国際的に活躍できる人材になれることが求められている役割だ」と強調する。そのため、入学する学生の比率にはある特徴がある。正規の外国人学生が約3割、帰国子女、インターナショナルスクール出身などの日本人学生などが約3割、そして日本の一般の高校を卒業した学生が約3割を占め、残りが交換留学生等となっている。様々なバックグランドをもつ学生達が共に学ぶことで、相乗効果を生みだしながら成長していく。森田典正学部長は「日本の高校から入学した学生の場合、最初から英語でディベートや、ディスカッションをするのは簡単ではない。しかし、そこに外国人学生や帰国子女の学生が加わることで、彼らから英語スキルや、プレゼンテーションの仕方、海外での授業中の振る舞いや習慣などを自然と学び身につけることができる」と述べる。また、外国人学生が日本人学生から学ぶこともある。「今までは、競争に勝ち1番になることが重要だった。けれど、日本には競争ではない違う価値観があることを知った」と心境の変化を述べる外国人学生もいる。


逆境を越えて

 国際教養学部は、入試偏差値もトップクラスで入学は容易ではないが、貪欲に新しい可能性を見出そうとする学生がやってくる。同学部4年生の三原田理奈さんは「世界から来た学生と一緒に学べる環境に魅力を感じ受験した。もっと自分の可能性が広がると思った」と入学の動機を述べる。大学入学前からの友人からは、「本当に積極的になったね」と言われるほどこの4年間で変わった。同学部4年生の鹿熊健さんは「中学、高校まで一度も海外に行ったことがなかったが、国際教養学部に挑戦しようと思い入学した。一年間のアメリカ留学を経て、堂々と話せば相手に伝わることを経験し、外国の人と自信を持って話すことができるようになった。この夏も一カ月間ドイツに行ってきたばかり」と成長を実感する。しかし、言語の壁や経験したことのない環境を克服することは簡単ではない。その逆境を越えた努力が、自信を生み世界へ羽ばたく力となる。佐々木ひとみ事務長は、「教員の方からも聞く話だが、本学部の1~2年目までは、国際的な環境での経験が少ない学生ほどショックが大きいと思う。けれどそういった学生ほど、4年目には本当に自信を持つことができ、この学部を選んで良かったと思える」と述べる。世界で活躍したいと思う学生にとって、そのチャンスを掴む舞台が国際教養学部にはある。



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