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ピパットポンサー ティラポン氏 
(東京工業大学 学術国際情報センター准教授) 


大学はグローバル化・英語化を  日本企業への就職拡大が鍵

――母国タイでの留学生受入れの状況についてお聞かせください。
 タイでは、以前は日本ほど留学生の受入れに積極的ではありませんでした。政府の公式見解ではありませんが、タイの大学関係者との交流の中で聞いたところ、最近はタイで学ぶ留学生が増えてきているそうです。1つはAUN(アセアン大学連合)関係での受入れです。日本の大学との大学間協定も増えつつあり、日本からの交換留学生も来ています。もう1つはタイとミャンマーの政府間で協定を結び、タイ政府が奨学金を準備してミャンマーから多くの留学生を受け入れています。また、文系の学部を中心にインターナショナルコースを設けるなどしています。
 学位を取得するために留学するのではなく、言語を学ぶために短期留学する学生が増える傾向があります。特に、近年東南アジア諸国の連携が強くなっているので、それらの国々からの留学生が増加しています。

――日本の大学がグローバル化するためには何が課題でしょうか。
 私は金沢大学で日本語を学んだ経験がありますが、当時は英語で行う授業は皆無でした。しかし、クラスに留学生が数パーセントほどでもいると英語で授業をしてくれる先生がいました。本学(東工大)はグローバル化を推進している理系の専門大学ですが、授業の英語化に対しては確かに賛否両論ありました。しかし、今後の世界はますます狭くなり国境がなくなっていくでしょうから、日本の大学も「グローバル化・英語化」の御旗を掲げて、学部・学科レベルでひとつひとつ課題を克服する努力をすべきだと思います。理系学部は専門用語が多く、日本語でも難しいのに英語ではなおさらです。しかし、私の研究室の修士課程で学ぶ日本人学生は結構理解できていますので、学部の段階からしっかり指導すればできるはずです。
 また、日本人学生はもっと世界へ出るべきです。交換留学等で1ヶ月でも海外の大学で学ぶと、一回り成長して戻ってきますし、学ぶ動機も俄然高まるようです。留学する前に当然準備が必要ですが、その期間もまた、集中して英語で専門用語を学ぶ貴重な機会となります。問題は、留学に出すにはお金がかかることです。ただし、産学協同で有益なプロジェクトを推進すれば、より資金を生み出せると思います。例えば、タイとの産学協同では、タイでの土木事業や鉱山関連などで日本側には世界トップレベルの技術があり、タイ側にはスポンサーとなる企業や政府があって互いにメリットがあります。

――世界から留学生を多く迎えるには何が必要ですか。
 1つは言語の問題です。日本の大学の修士課程で2年間学ぶには、その前に2年ほど日本語を学ぶ必要があります。この2年間をプラスとみることもできますが、早く修士を取得したい学生にはマイナスと見られるでしょう。英語のみで修士を取得できる道もあれば、意欲があって優秀な留学生が増えると思います。もう1つは就職の問題です。日本で働きたい留学生が日本企業に就職しやすくなれば、タイや東南アジアからの留学生も増えるでしょう。


Thirapong Pipatpongsa
 在日タイ王国大使館工業部などを経て、2005年から東京工業大学学術国際情報センター助教授。2007年に同センター准教授に就任。専門は土質力学、地盤工学。


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