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富士山  


庶民の心と共にある山
世界の共有財産



忍野村からの富士山 冬の富士山もまた趣深い

 忍野村からの富士山 冬の富士山もまた趣深い


 富士山は静岡県と山梨県に跨る、言わずと知れた日本の最高峰である。駿河湾の海浜から立ち上がる稜線は優美な曲線を描き、その造形は自然の産物と思えないほど均整が取れている。周囲にさえぎるもののない独立峰であるため遠方からでも容易に判別でき、和歌山県や福島県から眺望できた記録もある。


 古来富士山は人々の信仰の対象であり、活火山である富士山の沈静を願って浅間神社が建てられ、山岳信仰である修験道の道場も建てられた。その神々しい佇まいが日本古来の自然崇拝と結びついて富士山信仰の文化を生み出した。日本人の自然崇拝の観念を育んできた富士山は、単に日本の象徴というだけでなく、人々の思考や発想と密接に結びついている。初夢に見ると縁起がよいものの順位が「一富士二鷹三茄子」というように、庶民の心と共にある富士山なのだ。


 また、富士山は実に多くの文学や絵画の対象となってきた。古くは7~8世紀の万葉集にも登場。そして葛飾北斎の『富嶽三十六景』をはじめとする浮世絵は西洋にジャポニズムを引き起こし、のちの印象派の絵画に多大な影響を与えた。


 富士山には毎年国内外から20万人が訪れる。これほど世界の人々から愛され親しまれる山も珍しく、日本のみならず世界の人々の共有財産といっても過言ではなかろう。2013年には世界文化遺産に登録されている。


千円札の「逆さ富士」

千円札の「逆さ富士」

葛飾北斎『富嶽三十六景』より 神奈川沖浪裏


葛飾北斎『富嶽三十六景』より
神奈川沖浪裏


 
2017年12月掲載
 




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