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李 磊 氏 
(法政大学理工学部 教授) 


奨学金制度に工夫が必要  助手の給与枠、留学生に分割を

――日米の留学生誘致政策を比較するといかがでしょうか。
  米国は移民政策を取って世界中の人々を歓迎し、国際人材バンクをつくることに成功しています。定住希望者への規制はほとんどなく、チャンスが多いので有能な人材を多く集めています。米国の留学制度自体の魅力も大きいです。TOEFLやGRE(大学院進学の共通試験)などで一定の点数を取り、母国の学部卒・修士卒の証明書があればだれにでも奨学金を出す国はなかなかありません。自国に奨学金採用通知が届き、決定したうえで留学できる点も魅力的です。
  現在の日本の大学の多くは、海外の学生をわざわざ日本に呼んで面接してから帰します。学生は合格通知書が届いてからもう一度ビザを取らなければならず、取得に2~3か月かかる場合もあります。いかに簡素な手続きで有能な人材を呼べるようにするかは重要な問題です。
  米国と比較した場合、日本に留学生を受け入れる上で大きなネックとなるのが日本語です。例えば中国人の海外留学希望者の多くは英語しか勉強していませんので、留学先の選択肢はまず英語圏になります。そのため全授業を英語で行い、留学手続きから卒業証書発行まで全て英語で行うインターナショナルカレッジも日本に存在します。しかしそれを日本の全大学ができるかどうかは別問題です。
  まず留学生が日本に留学に来る目的が何なのかを留学生の立場から考えてみる必要があります。アジアからは主に専門分野の研究をするために来ますが、欧米など非アジア圏からは日本文化や日本語を勉強するために来る国費留学生が多く、この二つの流れをいかにバランスよく組み合わせるかが政策上の重要課題です。欧米からの留学生を増やそうと思えば国費奨学金の予算を増やす必要がありますが、そもそも一人約18万円という金額は高額です。半額程度にして支給人数を倍にし、私費と国費の割合の偏りを是正したほうが良いと思います。
  米国では大学OB等からの寄付金が多いので留学生への奨学金は確かに充実していますが、日本のように無償ではなく、TAやRAなど研究室の助手業務に対する給与の形で支払われます。日本もそれにならい、例えば一人当たり年間数百万円ある大学実験助手の給与枠を分割して、英語と日本語のできる留学生に与えるというのも一案でしょう。そうすれば日本語を勉強する留学生も増えるでしょう。また、日本語能力試験で一定基準を満たす学生には渡日前に奨学金を決定し、大学に来てからは学生の課題の採点などの仕事をするような仕組みをつくれば、留学生と日本人学生双方にとって有意義なシステムになると思います。
  30万人計画の早期達成のためには、今後このような制度上の工夫が必要になるのではないかと思います。


リ ライ
1961年中国生まれ、1989年日本政府国費留学生として来日。理学博士(西安交通大学)、工学博士(東北大学)。青森大学工学部助教授、山口大学理学部助教授を経て、2002年法政大学工学部教授に就任。全日本中国人博士協会会長。専門は情報科学、応用数学。