Top向学新聞日本で働く留学生OBたち端木 正和さん


端木 正和さん(中国出身) 
(株式会社サーチナ代表取締役社長) 


日中両国の相互理解を促進
留学生は「大志」を抱け

――どの様なことを目指して起業したのですか。
  日中両国の人的交流は拡大しつつあるものの、文化の壁は依然として存在しています。そこで私は中国情報を体系化して日本人に提供し、両国の相互理解を促進しようと考えました。体系化するには人と組織が必要なので会社を設立し、現在のポータルサイト「中国情報局」を立ち上げるに至りました。日本人が中国に対してまず「関心」を持つ機会を提供しようとの思いが弊社の原点となっています。そもそも関心がないところには愛しさも怨みすら生じることがありません。関心さえあれば、そのうち「中国に行ってみたい」「現地で買い物したい」と思うようになり行動に移す人がでてくることでしょう。そして現地の生の情報を持って帰って友人に話し、教科書にない中国、中国情報局にも紹介されていない中国の姿を知る人が増えてきます。相互理解を促進する上でこのようなプロセスが必要なのです。

――中国情報局はその分野で最大級のサイトになりました。
  私は子供のころから何か大きい仕事をしたいと思ってきました。「正しいことをしたければ偉くなれ」という言葉を聞いたことがありますが、正にその通りだと思っています。大きなことを実現しようとすれば理想とは異なる事態が生じます。それらを乗り越えていくには様々な力が必要ですから、やはりある程度の社会的地位を得る必要はあるのです。その意味で、留学生の皆さんはぜひ「大志」を抱いて頑張ってほしいと思います。

――起業を志す人にアドバイスをお願いします。
  経験者として言えることは、日本で起業するには周囲のリソースをうまく活用できるようにならなければならないということです。自分一人で用意できる資本や人的資源は限られていますので、他人の力をうまく借りられない人は物事を極めることはなかなか難しいと思います。
  したがって、当然ながら努力と信用が大切です。「この人は信用できる」という前提があって協力が得られるのであり、信用は努力の積み重ねで守られています。例えばある人が「あの人は5分前行動の人だ」と呼ばれているならば、その人がこれまでにその努力を相当積み重ね続けてきたということは間違いありません。そのように考え、日本社会から信用を得られるまで努力することが大切です。
  ただ、気をつけなければならないのは「信用できる」ということの判定の仕方が日本と中国とでは少し違うということです。典型的な例で言えば、日本人は何か願い事の相談を受けても、できない可能性を考えてそう簡単に「はい」とは言いません。逆に中国では「分かった」と簡単に言う傾向がありますが、実際にその約束が果たされるとは限りません。相手の面子を配慮して断ったりしないのが中国流なのですが、それでは日本人は依頼を受け入れてくれたのではないかと考えてしまいます。約束というものは契約、納品、品質など企業活動のすべてに関わりますので、日本の取引先に対しては中国流に対応しないよう注意すべきです。


もとき まさかず
 1971年生まれ。17歳の時に就学生として来日。大学卒業後3年ほど日本の商社に勤務。98年に退職し、同年6月に中国情報局を開設。99年4月学習院大学大学院入学、電子商取引を専攻。在学中に中国情報の体系化を提唱し、99年9月に株式会社サーチナを創立。