Top向学新聞日本で働く留学生OBたち郭 健さん


郭 健さん(中国出身) 
(大和SMBCキャピタル株式会社) 


強みを発揮できる環境をつくる
お世話になった方々への恩返し

  ――これまでのご自身の歩みを振り返っていかがですか。
  18歳で来日して最初はアルバイトと勉強の両立が大変でしたが、厳しい環境だったからこそ計画性や精神力が身につきました。一人で来日しゼロからスタートして、一歩一歩自分の足で歩んで来られたことが財産ですし、自信につながっています。
  大学に入って、自分にはない考え方を持つ人々と出会い視野が広がりました。早稲田雄弁会で日本の国家像やアジアの将来について考え活動している日本人の友人や、起業のため経済界との人脈作りに専念している友人たちと出会い、自分は社会の中でどんな役割を果たせるのか考え始めました。2年生のとき国際弁護士事務所で2ヶ月のインターンを経験しましたが、やってみると、弁護士は何かが起こってから依頼を受けて動く仕事だということが分かったのです。私には自分から何かを仕掛けていく仕事のほうが合っていると感じ、ビジネスの世界に進むことを決意しました。

――普段日本企業で働くなかで心掛けていることは。
  外国人であっても会社に入れば一社員として日本人と同じ仕事をしなければならず、かつ外国人として日本人にないどんな価値を提供できるのかを示していかなければならないということです。私が最初に入社した会社は新入社員を長い目で見て育てる会社だったので、自分を中国人と知りながら最初は中国とまったく関係ない部署に配属されました。5~10年それに耐えられれば、社内から大きな信頼を得られます。日本のビジネスでは信頼関係が大切なのです。日本企業は最初は相手をじっくり見て吟味していますが、いったん信頼したらそう簡単には関係を切りません。また、大きな組織ではチームプレイが大切で、和を乱さないために自分を殺さなければならないときもあります。他の社員にない価値を見つけ、強みを発揮できる環境を作っていきながら、それを伸ばしていくことが大事だと思います。
  これまで日本で生活する中で、日本の製造業の底力や消費者の目線の高さによって生まれるサービスの質の高さは世界一だろうと感じています。中国はこれから受託生産から自主的な技術開発へと産業構造を変えていかなければなりません。やる気とアイディアのある中国のベンチャー企業を発掘して、その更なる飛躍の為に日本のリスクマネーを提供すると同時に、日本の産業界が今まで蓄積してきた技術やノウハウを伝え、関わる者がみんな利益を得られるような、win―winの仕組みを構築していきたいと考えています。周辺諸国のダイナミズムを積極的に取り込んでいくことは、日本の経済活性化にもつながります。
  私は18歳のときから日本で多くの人の価値観に触れ、影響を受けながら自己を形成してきました。その方々との出会いがなければ今の自分はありませんでした。ですから私は、仕事を通して今までお世話になった方々と日本への恩返しをしたいと思っています。