留学・就学の一本化提言
(2009年3月号)
在留期間の延長はかる 卒業後の就職活動は1年に
法務省・出入国管理政策懇談会
法相の私的懇談会である「第五次出入国管理政策懇談会(座長/木村孟大学評価・学位授与機構長)は1月23日、「留学生及び就学生の受け入れに関する提言」を森法務大臣に提出した。「留学生30万人計画」の実現に向け、在留資格「留学」と「就学」の一本化や、入国・在留審査の大幅な簡素化、留学生の卒業後の就職活動期間を180日間から1年程度に延長するなどの方針を掲げている。
同報告書は、第五次出入国管理政策懇談会での13回にわたる議論を踏まえ、「留学生30万人計画」の実現に向けた出入国管理行政の在り方をとりまとめたもの。
主な内容は、まず、従来2年または1年とされてきた在留資格「留学」の在留期間を伸長する。教育機関による在籍管理を徹底し、不法残留などの問題が生じないような体制を構築。留学生が更新手続きの煩雑さから解放され勉学に専念できるようにする。
また、同様に負担を軽減する観点から、「留学」と「就学」の在留資格の一本化を図る。現在、大学等への留学生については「留学」、高校や日本語学校などへの留学生については「就学」と在留資格が区別されている。しかし、日本語学校卒業生の7割は大学等に進学している現状にあり、就学は留学のワンステップとしての意味合いも強い。欧米諸国で教育機関の形態による在留資格の区分を行っていない国も多いことから、ビザを一本化して更新にかかる学生の負担を軽減する。
在留資格「留学」と「就学」をめぐる取り扱いの不一致については、以前から問題が指摘されてきた。アルバイトなど資格外活動許可は、留学生正規生(研究生・聴講生除く)の場合週28時間まで(長期休業中は1日8時間まで)認められているが、就学生は1日4時間までしか認められていない。しかしながら国内で受けられる奨学金は留学ビザ取得者に対するものがほとんどで、就学生まで対象に含むものは圧倒的に少ない。通学時の学割についても就学生には発行されない例が多かった。これらの課題のいくつかは、すでに2003年の文科省中央教育審議会答申「新たな留学生政策の展開について」で指摘され改善が期待されていたものだが、今回の法務省の動きにより変化の兆しが見え始めた。法務省担当者は「アルバイトについてはビザの一本化によって留学生と就学生の許可内容の差はなくなると考えられ、留学生にとってはメリットとなる」と話している。これと同時に、大学院等の留学生によるTA(ティーチングアシスタント)・RA(リサーチアシスタント)活動も、学業と両立するものとして資格外活動許可を不要にすることも検討する。
さらに、これまで最大180日間だった留学生の卒業後の就職活動期間を、1年程度に延長する。欧州諸国、特にドイツなどでは外国人高度人材の国外流出に歯止めをかける観点から、留学生に卒業後一年間の求職活動のための滞在許可を与えている。日本もこれにならい、高度人材の定着を拡大して国際競争力の強化につなげる。
これとあわせて、学部や大学院を修了した留学生が就労資格へと変更する際に、専攻科目と就職先の業務内容との関連性を問わず幅広く柔軟に対応するべきだとしている。
法務省はこれらの提言を受け、今国会に入管法の改正案を提出。対応できるものについては新年度からの実施を目指す。
留学生30万人計画は、2008年1月に福田前首相が施政方針演説で発表したもので、2020年をめどに留学生数を30万人とすることを目指している。同年7月には、文科省をはじめとする関係6省庁による30万人計画骨子が策定され、具体策について検討を進めている。