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向学新聞2011年1月号記事より>


外国人留学生過去最高14万人

日本学生支援機構・文部科学省統計
 

日本人の海外留学は減少   強まる「内向き傾向」

 日本の大学等に在籍する外国人留学生が2010年5月1日現在で14万人を超え過去最高を更新したことが、独立行政法人日本学生支援機構の調査で明らかになった。前年からは6・8%(9054人)の増で、特に大学院は前年比10・4%増と伸びが目立った。いっぽう、文部科学省が発表した日本人の海外留学者数は前年比で11%もの減少となっており、諸外国で高まる海外留学熱と、ますます内向き傾向を強める日本との鮮明な対比が浮かび上がっている。

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 国籍別の内訳は、中国が8万6173人で全体の60・8%を占めている。以下、韓国2万202人、台湾5297人、ベトナム3597人、マレーシア2465人と続いている。

 留学生総数の伸びは2005年に12万人を達成したのち停滞したが、2008年以降は2年連続で約9000人増と再び上昇傾向に転じたように見える。ただ、1年に約1万人という現在の伸び幅がそのまま続いたとしても、2008年に政府が打ち出した「留学生受け入れ30万人計画」の当初目標である2020年までの30万人受け入れを達成することは難しい計算だ。

 いっぽう、文部科学省が12月22日に発表した日本人の海外留学者数の統計によると、2008年に海外の大学等に留学した日本人は約6万6833人で、対前年比で8323人の減少となっている。日本人の海外留学者は2004年に約8万3千人でピークを迎えたのち減少を続けており、2008年は1998年並みの水準にまで落ち込んだ。国別にみるとアメリカ合衆国が2万9264人、中国が1万6733人、イギリスが4465人となっている。

 なお、この統計とは別に今年11月に発表されたIIE(イギリスの国際教育研究機関)の「Open Doors」の統計によると、アメリカ合衆国における2009年の日本人留学生数は約2万5000人と、2008年よりさらなる落ち込みを見せており、減少に歯止めがかからない格好だ。

 文科省が日本人の海外留学者数を公表したのは初めて。統計自体は毎年取っていたが、今回の総数11%減という結果を受け顕著な「内向き志向」が読み取れたことから公表を決めた。

 減少の背景には、日本人学生の安定志向や、帰国後の就職に対する懸念がある。文科省留学生交流室の担当者は次のように話す。「学生の立場に立ってみたら、3ヶ月や半年留学してしまうと就職活動で他の人より出遅れてしまうのではないかといったメンタル面(の懸念)があると大学等から聞いている。」日本企業は新卒を重視したり、早期に募集を開始するなど諸外国と比較して特殊な採用慣行をとっている。スタートで出遅れたり、卒業が伸びて年齢が高くなってしまうことを懸念して、海外留学に二の足を踏んでしまう学生もいるようだ。

 大学間の国際交流を深めるうえでは、日本人の海外留学と外国人留学生の受け入れの双方が活発になることが望ましい。このままでは相互交流に支障が出てしまうことも想定され、「日本人学生がグローバルな感覚を十分に身につけられないのではないかという危惧がある」(文科省留学生交流室)。

 こうした現状を踏まえ、文部科学省では日本人の海外留学を促進するため、3か月未満の短期留学への支援を平成23年度予算概算要求に計上している。これまでも3ヶ月や1年といった短期の海外留学への支援策はあったが、それらよりもさらに短い、単位互換制度による交換留学や、長期休暇を活用したショートプログラムなどを大規模に支援する。比較的ハードルの低い短期留学への支援を充実させることで、口コミなどによる好循環を生み出し、その後の長期留学へのきっかけづくりにしようという方針だ。支援規模としては7000人程度を想定している。



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