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向学新聞2011年12月号記事より>


企業の採用広報活動開始
 

従来より2ヶ月遅い採用広報  短期間での企業PRに不安も

 12月1日を皮切りに企業の広報活動が本格化する。今年3月15日、経団連が「採用選考に関する企業の倫理憲章」を改定、企業の広報活動開始時期を昨年までの10月1日以降から12月1日以降としたことを受けて、日本の就職戦線にも変化があらわれている。

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 12月1日(木)、東京・汐留で合同企業説明会「みん就フォーラムin東京」(主催・楽天株式会社)が開催される。また、12月3日(土)には、株式会社マイナビが同じ汐留の会場で「マイナビ就職EXPO」を行い、株式会社リクルートも12月10日(土)に「開幕★LIVE金沢」ならびに「SUPER開幕★LIVE福岡」などの就職イベントを開始する。その後、各社は順次全国各地へイベントを展開していく模様だ。

 2013年新卒の学生から、就職活動開始が2ヶ月後ろにシフトしたことで、企業が内定に向けた選考に入る4月までの期間は、従来の6ヶ月から4ヶ月へと短くなった形だ。この期間に集中して企業側は採用活動を、学生側も就職活動を活発に繰り広げなければならない。今回の倫理憲章の改定の背景には、早期化している就職活動の影響で、在学中の学生が十分に勉学に集中できないという現状があってのことだ。そのため、12月1日以降も、学業と就職活動とを両立させるため、会社説明会は土日に集中する傾向が見られる。期間が限られているため、会社説明会の日程も重なり、学生・企業の双方にとって出会うチャンスが少なくなるといった問題が予想される。  

 2013年新卒の採用活動について、リクナビ編集長の岡崎仁美氏は「企業は例年通りの成果が得られるかどうかという点や採用活動が長期化した場合のコスト面について不安を感じている」と説明する。ある大手化学メーカーの人事担当者は、「大手企業に学生が偏るのではないか」と見解を述べるが、グローバルに活躍する大手企業であったとしても、対企業ビジネスが中心の場合では学生の認知度が低く、短期間での企業PRについて心配する声もある。初めての試みに多くの企業が不安を感じているようだ。

 こういった状況への対応として、学生へのPR機会を増やせるように、WEBで会社説明会を行うといった動きや、一斉に多くの学生と直接会うことのできる合同企業説明会に参加する動きが高まっている。「いずれも共通しているのは、学生との接触機会と相互理解の場をしっかり持ちたいということだ」とリクナビ編集長の岡崎仁美氏は分析する。

 企業の広報時期が遅くなったため、大学の対応も変化している。例年は10月頃から企業の担当者やOB・OGが大学にきて業界説明を行っていたが、今年からは出来ない。そのため、「12月までは内定を得た先輩4年生による内定報告会や業界別の座談会を開いてもらっている。12月以降になってから各業界のOB・OGをどんどん呼ぶ予定だ」と明治大学就職キャリア支援部の福田敏行部長は述べる。

 様々な影響を及ぼすことが予想される今回の就職活動であるが、経団連の労働政策本部の遠藤氏は、企業の広報開始時期を遅らせたことについて「就職活動だけを行えば就職できるということでもない。学生が高等教育というステージで、勉学や部活、サークル活動を通して人格形成に励んで欲しいというメッセージを込めていることをしっかり受け取ってほしい」と話す。企業活動のグローバル化が進む中、世界で戦える人材作りは急務だ。学力だけではなく、海外経験を含め見識や人格を深める体験を企業は学生に求めている。就職活動の時期の変化を受けて、「自分たちへの大いなる期待をあらためて自覚した学生も少なくない。一石は投じられた」とリクナビ編集長の岡崎仁美氏は強調する。




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