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向学新聞2012年12月号記事より>


日本留学フェアが世界で好評
 

大学と海外現地機関が連携

経済的支援の拡充不可欠

 世界各地で日本留学フェアが開催され大きな反響を呼んでいる。理工系分野や日本語、日本文化に高い関心を持ち、留学を希望する学生が多数存在していることが明らかとなった。大学が大使館など海外現地機関と協力することで効果的なPRに成功した。しかし、「留学費用」が壁となり留学を断念しなければならない学生もおり、支援の拡充が必要とされている。

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 エジプトで11月1日(カイロ)と3日(アレキサンドリア)に、九州大学主催の日本留学フェアが開催され1885名の高校生や大学生が来場した。エジプトでこれ程大規模な日本留学イベントが開催されたのは初めてとなる。ブースには絶え間なく来場者が訪問し、入試や奨学金に関する質問が相次いだ。ここ2年程、エジプトの政治情勢の悪化により留学フェアの開催は見合わされていた。しかし、予想を上回る盛況ぶりで、科学技術等を学びたいといったエジプト人学生の日本留学への関心の高さが浮き彫りとなった。 

 筑波大学は11月5日(オラン科学技術大学)と8日(アルジェ第2大学)にアルジェリアで留学フェアを開催した。アルジェリアの学生は理工系分野に加え日本語や日本文化への興味が高く、両日合わせて約1570名の大学生が来場し大盛況となった。今回のフェアがきっかけで、アルジェ第2大学では、日本語講座の開設が決定した。また、地元紙でも取り上げられるなど大きな反響を呼んでいる。
 
 また、11月17日には英国ロンドンで慶應義塾大学主催の留学フェアが催され、449名の大学生等が参加した。留学だけではなく就職に関するセミナーも実施された。慶大国際連携推進室の鈴木隼人氏は、「真剣に日本留学や日本での就職を考えている参加者が多い」と手応えを強く感じている。幼い頃から日本のアニメや漫画を目にしてきた世代で日本への親しみが強い他に、グローバル企業で活躍するためには、アジアに関する知見が強みとなるためアジア、日本での経験を希望する学生が多いといった背景がある。しかし、卒業後の就職について不安を感じている学生が多く、留学と就職の両方を相談するケースが目立った。この他にも11月10日には名古屋大学がウズベキスタン(来場者数約1200名)で、11月13、14日に東北大学がロシアで、11月22日には京都大学がベトナムで日本留学フェアを開催した。各留学フェアは、主催大学以外にも多数の大学がブース出展等を行い、留学生獲得に積極的な姿勢を見せている。
 
 世界各地での留学フェア成功の裏には、各大学と現地機関との協力が大きな鍵となっていた。アルジェリアでは、在アルジェリア日本大使館がfacebookを通しフランス語でPRした。ウズベキスタンでは、名古屋大学の海外現地事務所による高校生・大学生への広報が行われた。それに加え、日本語や日本文化の講義を開講しているJICAのウズベキスタン日本人材開発センターと連携しPRに成功した。英国では公的な国際文化交流機関であるブリティッシュ・カウンシルからの全面的な協力があった。
 
 しかし、世界の日本留学熱の高さとは裏腹に、学生の前には「留学費用」という大きな壁が立ちはだかっている。英国で留学フェアを開催した慶大の鈴木氏は、「経済的な不安は大きい。奨学金、安価な寮のサポートへの需要は高い」と話す。また、留学フェアで1500名以上の学生を集めたアルジェリアだが、文部科学省がアルジェリアの学生に付与する国費留学生の枠はわずか3~4しかない。アルジェリア政府の奨学金においても、フランスやイタリアなど欧州向けの学生が中心となっている現状がある。筑波大学国際部の森尾貴広准教授は「多くの学生が日本留学を希望しているが、来日させられず心苦しい」と訴える。日本留学への高い関心を無駄にしないためにも奨学金枠の増設は欠かせない。グローバル社会における知日派の育成は外交、ビジネス面で必要不可欠であり、将来を見据えた支援が求められている。



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