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向学新聞2014年11月号


日独グローバル化対応に課題

                       独はランキング傾倒を危惧

                 

日独シンポジウム 
パネルディスカッション(写真提供/DWIH東京)


 日独シンポジウム「グローバル化時代の大学の役割」(主催/ドイツ科学・イノベーションフォーラム東京)が10月8日に東京大学で開催された。日本とドイツの教育関係者や産業界が21世紀の大学の使命について議論した。
 
 日独の大学の共通点について、ドイツ最高峰のルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘン(ミュンヘン大学)のハンス・ファンエス副学長は、「グローバル化への対応、特に大学で英語を使うことによるアイデンティティの問題を両国は抱えている」と指摘した。英国THEによる世界大学ランキングのトップ10は米国と英国の大学が独占。その後に続く大学を見ても、多言語国家スイスのチューリッヒ工科大学が13位で、23位の東京大学が初の欧米以外の大学となっている。東京大学の江川雅子理事も「世界大学ランキングは英語圏の大学が有利だ」と強調した。日独共に英語コースなどでグローバル化対応を推進しているが、ケルン大学のミヒャエル・ボリック副学長は、「国際化のための費用が、大学ランキングの順位向上のためだけに投じられることを危惧している」と話した。
 
 今後の大学が担う役割について、ハンス副学長(ミュンヘン大学)は、「教育・研究に加え人格形成こそが重要だ。競争が全てではない」と昨今の高等教育機関における国際競争について言及。マルティン・ルター大学ハレ・ヴィッテンベルクのゲネージ・フォリヤンティ=ヨースト教授も「カリキュラムに追われるのではなく、価値の伝承こそが大学の役割だ」と話し、ドイツの高等教育に対する考え方が浮かび上がった。
 
 また、日本の大学進学率は50%以上、ドイツも40%代と多くの大卒者が社会に輩出されているが、大学が産業界からの人材要望にどのように応えるかについて、ゲネージ教授(マルティン・ルター大学)は「大学のあり方を企業のニーズに合わせることには抵抗がある。大学は自由でなければならない」と話した。客席からも、「日本の大学は就職に重点を置かざるを得ない社会状況だ。大学入学試験を見ても、日本は学力重視で、ドイツは人格重視だ。日本とドイツでは人間観が異なる」と指摘する声が挙がった。しかし、東京大学の吉見俊哉副学長は、「大学において自由は決定的に必要だが、大学はクリエイティブな人材や価値観を育てることが出来るはずだ。具体的な人材を示すことで産業界を説得することが出来るだろう」と強調した。



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