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向学新聞2016年4月号記事より>


日本語教育機関の留学生5万人超

ミャンマー・スリランカが急増 日振教調査
 


 一般財団法人日本語教育振興協会(日振協)が3月、2015年度の日本語教育機関実態調査の結果報告書を作成した。2015年7月1日現在で日振協が認定している日本語教育機関を対象に調査(回答数334校)したもので、総在籍留学生数は5万847人(前年度比7180人増)と過去最高を記録した。



 中国留学生が1万7655人(同9%増)と最も多く、次いでベトナム留学生1万5715人(同14%増)、ネパール留学生6301人(同32%増)となった。大きな増加率を記録した地域がスリランカとミャンマーだ。スリランカ留学生は1102人(同78%増)、ミャンマー留学生は1067人(同105%増)だった。
 
 ミャンマーの政治民主化など様々な改革に伴い、2011年には中古車輸入規制が緩和され日本からの中古車が急増。現在では様々な日系企業がミャンマーに進出し人的・経済的交流が活発になった。日振協の高山専務理事はミャンマーとベトナムの留学生増加の類似性を指摘。「数年前から日本・ベトナムの経済交流が活発になるに従い、ベトナムからの留学生・技能実習生が急増した。ミャンマーにおいても同様の現象が生じるのではないか」と話す。
 
 一方で、日本語学校の留学生に占める中国留学生の割合が大きく低下してきている。2010年度は全体の67%を占めていた中国留学生だが、2015年度は34・7%と半分近くに下落。ベトナムは2・5%(2010年度)から30・9%(2015年度)に激増し、来年度には中国・ベトナムの立場が逆転する可能性がある。
 
 課題は大学進学率の減少だ。5年間で日本語学校卒業生の大学進学率が約12%減少して26・4%になった。最も多い進学先が専門学校で6割に及ぶ。目下のところ、数年間留学生が増加中のベトナムだが、約8割が専門学校に進学。ネパールも同様に8割が専門学校に進学している。
 
 背景には、「日本語レベル」の問題がある。専門学校を第一志望とする留学生もいるが、日本語力が足りず大学進学を断念せざるを得ない留学生が多いのも現実だ。専門学校は日本語能力試験N2レベルなどで入学できるが、大学進学にはN1レベルが要求される。これまで中国など漢字圏の留学生が多かったため、日本語学校の修業期間2年でN1まで取得できる学生が多かったが、非漢字圏の留学生にとっては壁が高い。
 
 また、留学生や日本語学校の増加に伴い日本語教師の不足という問題もある。高山専務理事は、「日本語学校の関係者からは『優秀な教師が足りない』、『募集をかけても集まらない』といった声をよく聞く」と話す。非漢字圏の留学生への日本語教授法は改善されてきているが、まだ発展させる必要がある。日本語学校に入学しても、十分な語学力を養えなければキャリアは自由に選択しづらい。日本企業としても優秀な外国人材を活用しきれないというもどかしさが募る。中国留学生に依存しない多国籍化という新たな課題が突きつけられている。




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