Top向学新聞>2020年1月1日号

共生社会実現の条件とは 


ウスビ サコ 氏
京都精華大学学長


 
日本人の精神的準備は必要


――教育についてお伺いします。京都精華大学では去年から入試の形を変えて入学者の3割が留学生になったとのことですが、留学生増のビジョンを打ち出しているのですか。

 実は留学生は自然発生的に増えているのが現状です。試験のスタイルを変えたのも留学生のためだけではなく、まず共通の統一試験を設けて門戸を様々な人に広げようということで、実技でしか入れなかった専攻にも学科試験を導入しました。留学生にもすべての試験をオープンにしています。受験番号だけでは留学生かどうかわかりませんから、意識的に留学生を採ることはできませんが、蓋を開けてみたら留学生が数的にも多いし、成績順位も上がっていて、留学生のほうがトップになることもあります。

――日本語力が不足している学生へのサポートは行っていますか。

 今日本語学習室に一人先生を配置し、TAとともに授業の補修に取り組んでもらっています。

 今後は英語だけで単位を取れる授業も作ります。2021年には日本文化関連の講義を設ける予定で、今計画を整理しているところです。

 また、大学院はやっぱり英語あるいは中国語で講義できるようにしないといけないとも考えています。それは日本人学生に対する相乗効果もありますから。

――ダイバーシティ推進には必要な施策ですね。

 今、日本社会ではダイバーシティと口では言っていても結構マイナスの評価が多く、種類が増える=弱くなると捉えられがちです。多様性があるからこそ非常に強くなったという例を今後増やしていく必要があります。

――ダイバーシティを実現できていない日本企業は多いかもしれません。

 外国人を入れたら成功できると思うのは間違っていて、まず居る人たちの価値観が変わらないといけません。それが変わらないで外国人を増やしても、混ざらないし、互いに刺激にならないのでダイバーシティそのものを実現できないのです。だから日本人どうしでも寛容に様々な意見を受け入れていく人たちを増やしていかないといけないと思います。それが自然にできれば、たとえその中に外国人が入ってきてもダイバーシティが担保できるんですね。

 ダイバーシティのマネジメントではテンプレートがあるわけでありません。日本では流行るとみんなテンプレート化してしまいますが、似たようなものを作れば逆に多様性の実現自体ができません。テンプレートがない中で、向き合いながら対応していくことが重要です。

――個々人一人一人の力を引き出してまとめあげるマネジメントも必要ですね。

 一方で日本人にどうやって多様な人を受け入れる姿勢を持たせるかという教育も実は大事だと思うのです。そこをかなり放置して留学生に関してだけ様々な政策ができていますが、受け入れた留学生と一緒に共同で様々なことができる日本人を育てていく必要があるのです。そこの教育も分厚くやっていかないと、外国人への拒絶反応が起きてしまいます。

――留学生が増えたことによる良い影響は出てきていますか。

 明らかに雰囲気が違ってきています。留学生が様々な活動を提案し、その活動によって日本人も今まで気づかなかったことを学ぶということに意識的に取り組んでいます。皆さん身をもって文化の違いを感じています。でも、それを「学んだな」と思うのか、「やっぱりちょっと外人は難しい」と思うのかで分かれる可能性はあるので、日本人学生のほうの精神的な準備は必要だろうと思います。こういった教育は、いま国や文化の壁が低くなっている中ではやって当たり前のものだろうと考えています。みんなで京都精華大学を作って行って、偏差値で測れないグローバルなタイプの人たちを育成する多様性のモデル校にできればと思っています。

――ASEANやアフリカ圏の留学生増という目標も掲げていますね。

 2050年には確実にアジアの都市人口が増えて教育機会を求める人が増えてきますし、人口ではアフリカが一番になるわけです。本学で育った学生の将来の活躍の場は日本だけではないと考えるべきです。一緒に勉強している留学生と手を組んでそれぞれの母国や第三国で起業するかもしれません。彼らがそういうところにも仕事に行けるような機会や可能性を、大学としても作らなければいけないと考えています。

――在学中に起業する人も出てくるかもしれません。

 それは出てこないといけないんですよ。大学はインキュベーション機能も持たないといけません。今日本で弱いのが留学生のインキュベーションです。日本人は1円からでも起業できるのに、外国人が500万円必要なことにはちょっと違和感を覚えますね。同じ若者として見て行くべきだと思います。

<1>留学生を活かすビジョン持て―  <2>



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