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向学新聞2021年4月記事より>

厚生労働省がいよいよ本腰

外国人労働者も働きやすい職場環境の整備

 外国人労働者が、職場のルールをよく理解し、活躍しやすい環境を整えるため、雇用管理に役立つ多言語用語集及び翻訳データの作成・普及事業が、2020年8月から始まり、2021年3月末の成果物の公表をもって一つの区切りを迎えた。省庁が出すマニュアル関連のものの中でも、今回公表された成果物はかなり画期的で踏み込んだ内容に仕上がっている。

成果物概要

 本事業の注目すべき点は、外国人労働者の活躍促進のためには、職場の中にある異文化間の認識の違い等について、外国人社員、日本人社員双方の理解を深め、大小のトラブルを共に乗り越えていくことが重要である、ということを厚労省が明言し、そのための環境整備に必要な材料を作成した点にある。

 これまで、厚労省からは、外国人雇用管理指針が出されていたが、このガイドラインは各法令に則りつつ、雇用管理の改善のために講ずべき措置をリストアップする観点で作られていた。それに対して今回の事業では、文化の違いにまで踏み込んで、より積極的に外国人労働者の働きやすい環境を作ろうという観点での議論が有識者研究会内で進められ、その観点が成果物にも大きく反映されている。国が外国人労働者の活躍促進に本腰を入れる意思表示ともとれる内容だ。
 
 特に特徴的なものは、「外国人社員と働く職場の労務管理に使えるポイント・例文集」の中身だ。労務管理で必要となる基本的な項目について、(1)日本の一般的な雇用慣行、(2)一般的な外国の文化や外国人の考え方の一例、(3)上記2点を踏まえた上での注意点が記載されているため、外国人労働者と、人事労務担当者の双方に気づきが得られる内容となっている。また、編集できるファイル形式で公開されるため、会社ごとの就業規則を書き加えて、会社独自のマニュアルを作成することが可能だ。
 
 今回の事業の方向づけや成果物作成にあたっては、有識者研究会に参加した有識者委員の知見が広く反映されている。モデル就業規則のやさしい日本語版の作成にあたっては、やさしい日本語の専門家である庵功雄氏(一橋大学国際教育交流センター教授)が多くを担った。また、最終回となる3月9日の第4回有識者研究会の総括では、委員の淺海一郎氏から今後の課題として、「いかに成果物を実務担当者に届くように周知していくかと共に、外国人社員の労務管理についてノウハウと知見を持った担い手をどのように育てていくかが重要になる」と次への問題提起がなされた。
 
 公開された成果物は、厚労省のWEBサイトに寄せられた意見等を参考に、必要に応じて更新していく予定だ。外国人労働者本人や事業主・人事労務担当者だけでなく、教育関係者や学校の就職担当者にも役立つ内容であるため、成果物が広く活用され、問題解決のための前向きな意見による議論が活発化することが期待される。
二面に関連記事

<関連サイト>
外国人労働者の人事・労務に関する3つの支援ツール<外部リンク/厚労省>

雇用管理に役立つ多言語用語集(10言語)<外部リンク/厚労省>

外国人雇用管理指針について<外部リンク/厚労省>

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