Top向学新聞日本で働く留学生OBたち>純子 ニルマラさん


純子 ニルマラさん(インド出身) 
(グリーンジャパン株式会社代表取締役社長) 


日本企業の風土を世界に  メンタリング集団が必要

――日本の企業文化について、どのようにお考えですか。
  私は日本企業の風土は世界に持っていくべきものだと思います。自然災害はともかく、人間が作ったものからは人間に悪い影響を与えてはならないという考え方が、江戸時代以前からの伝統的な企業風土として備わっています。そして、社員を大事にして長く働いてもらおうとします。それが会社全体の利益につながり、会社自体が長く存続できることにもつながっています。終身雇用の風土は良いものです。「自分のスキルを伸ばしながら働いてください」という企業の姿勢ゆえに日本は技術やノウハウを蓄積してこられたのです。定年後もまた同じ会社で働き、30~40年間のノウハウを還元して次世代に残していけるような制度を、企業や政府が率先して実施しているような国はほとんどないと思います。

――日本で起業されたわけですが、外国人の起業における課題点とは
  一般的に、外国人が日本でビジネスを立ち上げることは難しいとよく言われます。例えば米国や英国では、多くのグローバルな社会起業家たちがゼロからスタートしてお金を稼いでいます。米国や英国は社会の意思決定のスピードが速く、結果を気にせず何でもリスクを取ってやってみようというポジティブな考え方の人が多いのですが、日本ではやる前から結果を問題にする傾向があります。結果に対して責任をもつ意味では良いことですが、何か新しいことをやってみたい人でも「自分は結果を出せなければならない」と先に考えてしまい、行動を起こせなくなってしまうことは問題です。
  目的地にたどり着く方法は様々です。ルートはどうであれゴールにたどり着ければ良いのです。しかし日本社会では、目的地にたどりつく方法自体がひとつのルールになってしまっています。例えば地下鉄なら10円安くて乗り換えなしで行ける路線がベストだと考えますが、それは唯一の道ではないのです。一回乗りついでも間違いではないし、乗り換えるときに新しい人との出会いや新しい発想が見つかるかもしれません。これら二つの道を説明する力が、起業をアドバイスする方にあるかどうかが問題です。
  日本の会社は団体として、外国人と日本人の両方からメンタリング(対話と助言による育成指導)を受けることが必要だと思います。外国人社員は就職していても様々な不安があります。実際、自身が歩んでいる道が正しいとは限らないかもしれません。企業側も、外国人を入れてもうまく仕事の説明ができないのではないかという不安を抱えているはずです。私はそのような双方の不安を解消していくためのメンタリング集団を育てていく必要があると感じています。
  日本企業は海外進出しようとする際に、相手が信頼できるのかといったリスクを気にしますが、最終的には会社がどういう趣向で何のために何を売っていきたいかきちんと決めていないとうまくいきません。ゴールが見えるようにし、本当に自分がやりたいことを見つけさせてあげようという目的でグリーンジャパンを作りました。ゴールが決まって海外に進出する際には、外国人留学生のマンパワーを使えばいいのです。そのためにも私は今、特にインドからの留学生を増やす流れをぜひ作りたいと考えています。



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