Top向学新聞日本で働く留学生OBたち>于 蘭さん


于 蘭さん(中国出身) 
(株式会社学生情報センター) 


苦労も勉強と思って乗り越える  協調性が求められる日本企業

――どのようなお仕事をなさっていますか。
 Nasic学生情報センターという会社で学生マンションや大学所有寮の管理・運営事業に携わっており、日本で生活する留学生をはじめとする学生の様々なサポート業務を行っています。

――企業で働く中で学んだことは。
 学生時代と違って会社組織の一員ですので、自分がこれをしたい、これが正しいと思っていることと組織の大きな方針とをどう適合させるかを学びました。また、組織は一人では成り立ちません、みなと協力して一つの仕事を成功させるチームワークも学びました。
 留学生の中には、1~2年日本企業で経験を積み、帰国して起業する希望を持つ人もいると思います。ただ、現時点での自分の能力で成功できるのか考えることが必要だと思います。私も会社に入って、一つのことを企画してから実現させるまで長いスパンで考えることを学びました。企画は良くてもやってみると結果が全然違うことがあります。社会は自分の思い通りにいかないのが普通で、それでも我慢して最初から最後まで自分一人で考え、運営できるようになって初めて独立すればいいのです。何事も経験が重要だと思います。
 確かに日本企業は特有の文化や意思決定のプロセス、スピード感において保守的だと感じる人も多いかもしれません。しかし日本で生活したいと決めた以上、日本の習慣ややり方に合わせて行く覚悟も必要です。小さなことをコツコツ積み重ねて、効果や改善の結果を持って説得し、周囲がうまく自分の能力を認めてくれるように努力することが大切です。今いる会社で認めてもらえなければ、どこに行っても同じような問題が起こる可能性があると思います。

――人の成長次第ということですね。
 苦労がないと成長しません。苦労は自分の勉強だと思って、今嫌なことを経験しておけば将来何でも耐えられる、という前向きな考えで乗り越えられるかがポイントです。やはりそういう意識や姿勢が大切です。面接対策などは一時的な対応であり、たとえそれでうまく就職できてもその人に普段からの意識や姿勢がなければ入社後に周囲とうまくいかないですし、長続きもしないです。日本企業の面接では自分の意見をしっかり述べることと周囲への気遣いができるかという両面を見られます。自分の意見を求められ、かつ協調性も求められます。いくら優秀でも、入社して他の人とうまくやっていけるのかを会社側は考えます。日本企業には少し能力が低くても周囲とうまくやっていけて長く働ける協調性のある人を採用する傾向があります。それが特に中小企業の現実ではないでしょうか。実際にその企業がどういうタイプの人を好むか把握しておいたほうが就職活動には有利です。
 また、あまり外国人という意識は持たないほうが良いです。私の仕事でも、外国人だからこれができますのでこれだけをします、ということはありえません。日本人にできることは私もできるようにして、その上でプラスαのできることを持つという目標を掲げています。外国人の仕事だけをしていては、もし会社が方針を変えてその事業をやめた時には仕事を失ってしまいます。プラスαをいかに磨くかを考えたほうが将来的にも有利です。
 そして、外国人だからこそ周囲の日本人のマナーを見て学ぶべきです。日本人はその場でマナーに関してはっきりと注意せず、例え嫌な気持ちになってもその時は何も言わずに、次からはつきあわないというケースが多いので、外国人は何が原因でうまくいかないのか気付かないのです。空気を読んでやりなさいということは外国人には難しく、その点は日本人や友人の外国人など周囲の方が本人にしっかりと言ってあげる必要があります。せっかく就職したのに上司と合わなくて仕事をやめたりするのはもったいないことです。互いに歩み寄り理解し合う姿勢が必要だと思います。



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