Top向学新聞今月の人オミル・ヘンリーさん


オミル・ヘンリーさん  (ケニア出身) 
(拓殖大学国際開発学部) 


嫌でも頑張る事が必要  ODA拠出を教育面に

――研究内容について
  私の専門は日本の経済発展についてです。どういう方法で日本が発展したか、それがアフリカの発展にどう役立つかといったことについて研究しています。
  日本の発展には他のアジアの国々とは異なる点が多いです。例えば日本では同じ会社で20年働きます。しかしヨーロッパやアフリカには年功序列という制度はなく、個人として何ができるかが問われますから、優秀なら2~3年でやめて違う会社に入ります。ですから若くてもどんどんレベルが上がっていきますが、日本ではいくら頑張っても短期間では部長以上になることは難しいです。そういうことは来日前には知りませんでした。ケニアでは日本のように会社に入ればいいというものではありません。ですからみな向上心や独立心が旺盛です。日本人はみんなで一緒に発展していきましょうというスタイルですが、それはそれで日本人にとっては多分よかったのではないかと思います。

――日本人から学んだことは。
  まず、時間を守るという点です。ケニア人は時間にルーズで例えば10時の約束が10時半になったりします。私が最近アルバイトで入った会社も時間を厳しく守るようにさせています。また、ケニアでは嫌なことはそのまま嫌と言いますから、日本のように残業はせず、みんな定時で帰ります。しかし私が日本で学んだことは、嫌でもやはり頑張らなければいけないということです。
  また、日本人の教育に対する関心の高さは見習った方がいいと思います。アフリカでは田舎に行くと、非常に貧しいけれども自分なりに貧しいと思わず、遊牧をして幸せそうに暮らしている人がいます。しかし生活は田舎の生活のままでもいいとは思うのですが、教育は変わらなければいけないと思います。遊牧民は子供に仕事をさせますから学校に行ってしまうと家族も困るのですが、だからといって全然学校に行っていないと「こうした方がいい」といわれても想像すらつかなくなってしまいます。ケニアは国内に46もの民族がいて、それぞれ言葉も習慣も考え方も全然違いますので教育が全国に行き渡っているわけではなく、地域ごとの差が激しいので、国が「こうしよう」といってもそれができるまでには長い時間がかかるのです。日本ではほとんど全員が高校3年生まで教育を受けていますが、それができればアフリカの人々の考え方も変わってくるかもしれません。開発の最初は教育なのです。

――日本人がケニアの人々に学ぶべき点は。
  ケニア人は自分たちの国が発展途上国だからといってあまり落ち込んだりしません。人間関係が非常によく、心に余裕があるからで、ケニアに旅行に行った人たちはその点にみな感動して帰ってきます。困難は人生に付きものですから、良い時も悪い時もあると考えるのです。貧困地域で生まれれば貧困も当たり前で、あとは自分が勉強して豊かにするだけなのです。日本に来て最初は、自殺する人がいることに驚きました。ケニアには自殺などありません。

――日本の途上国支援についてどう思いますか。
  ODAについては、日本が何億という巨額の援助を拠出しているのにどうして途上国がなかなか発展しないのか、という疑問が以前からありました。私としては、無償援助はもうすこしやり方を考えないといけないと思います。ただでもらえるので待っているだけになり、途上国に悪影響を与えてしまいます。簡単に大きなお金をもらうと簡単に無駄にします。ですから途上国支援は直接投資という形にすればいいのです。日本の企業が現地に行くわけですし、倒産できないからしっかり運営します。雇用創出や人々の収入源の確保にもつながり、政府にも税収が生まれます。やはり仕事をして頑張ってもらえるお金が一番いいお金だと思います。そうでないと一生懸命頑張ろうという気がなくなってしまいます。
  また、どうせODAを出すのであれば教育面がいいと思います。昔の日本でも武士道の教育を皆に行う制度があったから、発展したのかもしれません。教育は物ではないので盗まれませんし、人に教育を施せば、アフリカに帰ってもどこに行ってもその人がいる地域で役に立つのです。たとえば途上国に行って何人かの研究者や学生を日本につれてきて、4年間の授業料を払ってあげ、卒業したら母国に戻って日本で学んだこと活かせば、本当に役に立つODAになるでしょう。それが本来の目的にかなうやり方ではないでしょうか。