Top向学新聞日本で働く留学生OBたちグエン・ティー・ミー・チさん


グエン・ティー・ミー・チさん (ベトナム出身) 
(株式会社GBA代表取締役) 


将来の夢は母国で大学教授
ベトナム人の誇りを持って働く

――日本に関心を持ったきっかけは。
  母の姉が日本企業に就職していたことや私の姉が日本人男性と国際結婚をする予定だったことが日本に関心を持ったきっかけです。私は95年に日本語を学び始めましたが、その頃まだホーチミンには日本語を話せる人が少なく、日本語を学ぶことが就職に有利な状況でした。ベトナムでは人文社会系大学の東洋学部で日本語を専攻していました。そこではしっかり勉強して卒業すると日本語で仕事が出来るレベルになります。

――日本留学で学んだことは。
  日本では日本語学校を卒業後、東京外国語大学で大学院受検に足りない科目の勉強をし、その後上智大学大学院に入りました。発展途上国への直接投資に関する研究かODAの研究にするかで迷ったのですが、指導教官からODAを研究している学生は少ないからやってみないかと勧められ、日本のベトナムに対するODAの研究を選びました。ODAは政府が行うことなので、民間のレベルでODAの何かを変えようとするのはそもそも難しいことです。それで私は現地の一般のベトナム人の視点に立った研究をしたいと思ったのです。
  具体的には、水力発電のためのダム開発に対して現地住民は反対なのか、賛成なのか、その反応を研究しようと思い、ベトナムで6回、インドネシアで1回、ダム開発の現地調査を行いました。住民の反応としては大きく三つありました。一つは「何故ダムが必要なのかが分からない」、もう一つは「国のためなので賛成」、もう一つは「どうでもいい」という反応でした。何故自分が立ち退くのかも分からないという人の中には、もう自分の年も分からず知人はすでに全員死んでしまったという高齢の老人もいました。息子は都市に出稼ぎに出てしまっていて、その老人の寂しそうな姿が今でも心に残っています。調査を通して、同じダム建設の現地住民でも自分が直接被害を受けるか受けないかによって反応が異なることが分かりました。
  私はこの研究を通して、「自ら考える」という力が身についたと思います。日本の大学のゼミなどで先生が様々なテーマを出してくれますが、それについて皆が自分で勉強し発表していくことで考える力が身に付くのだと思います。私の夢はいつか母国で大学教授になることです。ベトナムの大学では毎年同じ講義が繰り返されているので、私は日本のゼミのようなシステムを取り入れていきたいと思っています。

――現在日本で働いていらっしゃいますが、その経緯を教えて下さい。
  卒業後は研究を活かした仕事を希望していましたが、JBICやJICAなどは日本人でないと入るのは難しいと感じ、ベトナム現地勤務になる場合もあるかと思いあきらめました。私は日本人男性と結婚していたので、日本に残りたかったのです。そこで、ベトナムに関係のある企業か日本にあるベトナムの企業を希望しました。現在務めているFPTは元ベトナム国営企業の日本現地法人で、社員の9割以上がベトナム人です。就職の際に夫に相談したところ、「ベトナムのためにもなるし、生活もよくなり、土日は休み、君の論文の研究もできるのだから、私は協力しますよ」と快く応援してくれました。今は将来の夢のために好きな研究を続けながら、日本の大手企業を相手にベトナム人としての誇りを持って働いています。