Top向学新聞今月の人李 春鶴さん


李 春鶴さん (中国出身) 
(東京大学大学院工学系研究科) 


ダム建設で大切な人間関係  日本に学ぶ組織のあり方

――研究の内容について。
  私はダムについての研究を専門としています。来日前に精華大学の学部を卒業後、韓国ソウル大の修士課程へ留学し、橋の鋼構造について勉強しました。そして今は東大の博士課程でコンクリートの耐久性について研究しています。
  日本では世界でトップレベルの土木技術を学ぶ一方、ダム建設で必要とされる人間関係の大切さについても学ぶことができました。日本人はまじめですし、組織のシステム化を進めています。外から見ると組織の雰囲気は硬く非効率的に見えるのですが、組織に所属して一緒に働いてみると本当に効率が高いことが分かります。人と人との協力体制が整っている点や、人自体のレベルの高さが印象に残っています。それで、大学以外の研究所や企業で実際にどのようにシステム化がされているのか、業務の流れを勉強したいので、卒業後は2~3年日本で働き、その後母国に戻ってダム建設の現場などで働きたいと思っています。
  ダムの建設にはコンクリートや鉄など様々な材料と設備が必要で、それらをいかにして集め、効率的に使って工事をうまく完成させるかが一番大切なことです。大勢の人の協力がなければプロジェクトが進みませんから、人材には他人との協調性が要求されます。三峡ダム建設のような大プロジェクトには各地から優秀な人を集めなければなりませんから、日本人が行っているような組織のシステム化はぜひとも必要になります。
  例えば韓国人の場合は組織への帰属意識よりも人間どうしの親近感によって結びついている場合が多く、感情に左右される傾向が強いため、各人の利害関係がぶつかると組織が動かなくなるかもしれません。日本ではシステム化されて各人の役割が決まっていますので、自分の責任範囲のことには責任をもってきちんと仕事をしようとします。
  また、中国人の場合は自分でやろうという気持ちが強いです。日本と韓国は、いい技術があったらそれを買って使いますが、中国人は自分で基礎から開発し、売って、使おうとする傾向があります。借り物は嫌いだという気持ちがあるのでしょうが、基礎技術は他国の会社から買い、その後の段階で他国の会社と中国の会社が協力して技術を開発する形にしていくことも必要だと思います。