李 潔さん
(近畿大学経営学部商学科)
日系企業の人材採用について研究 通訳には文化の翻訳能力必要
――李さんの研究について教えてください。
私の専門は、在中日系企業の人的資源についての研究です。中国に進出している日系企業がどんな人をどう採用すればいいのか、その具体的な方法についての考察を進めています。
日系企業が現地の従業員を雇うとき、文化の違いによるトラブルがよく発生します。現地の人々を管理するには、日本と中国双方を理解できる人材を採用することがポイントで、言葉だけでなく文化も翻訳できるような能力の高い人を雇うべきです。そのための人材として留学生はぴったりだと思います。
私はある日系企業の製造子会社で3年近く働いた経験があり、通訳にも携わりましたが、正しく伝えたつもりなのに日本人の上司はなかなか理解してくれず、「本当に伝えたのか」と聞かれることがよくありました。例えば、中国人は間違ったときもすなおに「ごめんなさい」と言わないので、日本人は「なぜ何回も言っているのに謝らないのか」と思います。したがって通訳に「しっかり伝えたのか」とつい口を出すことになります。その後私は対策として、中国人には「間違ったから最初に謝ってください」と先に言うことにしました。そうすると日本人とは話しやすくなります。これがいわゆる文化の通訳ですが、かなり難しいことですので、場合によっては通訳の教育も必要です。
海外現地の企業における人間的なトラブルの多くは、お互いの文化の説明不足によるものだと思います。日系企業の課長クラス以上は日本人駐在員がほとんどですが、現地のことをあまりよく理解しておらず、単なる言葉だけの翻訳しかできないため通訳の役割を十分果たしていない場合が多いです。幹部人材の登用に問題があるわけですが、どんな人を採用すべきなのかヒントがない状態なのだろうと思いますので、そのような現状を解決するヒントを与えることができるような研究ができればと考えています。