Top向学新聞日本で働く留学生OBたち楊 子明さん


楊 子明さん(中国出身) 
(アクセンチュア株式会社) 


堂々と日本人と勝負を
チャンスを確実に活かす

  私はハルピン工業大学1年のとき、姉妹提携校である千葉工業大学との長期交換留学プログラムで40名の仲間たちと来日しました。留学で得た大きなものは、人間は国境に関係なくどこでもやる気があればその分成長できると思えるようになったことです。来日当初は授業が8割がた聞き取れませんでしたが、仲間どうし互いに助け合い、チームワークで乗り越えることができました。みなお金がない時代でしたので、どの店で卵が数十円安いといった情報まで共有し、自転車で30分かけて買いにいったこともありました。そのような時代からの仲間は大切にしています。
  その後大学院を経て就職活動を経験しましたが、これに関してはかなり納得のいく結果が出せたと思います。まず自分が納得のいく会社に行くという目標を設定し、半年かけて筆記試験や面接の注意点などを着実に研究していきました。一つの面接には4時間ぐらいかけて準備し、聞かれる可能性のある事柄を想定して答えを5パターンぐらい準備しました。私の場合お金をためてからアルバイトを半年間やめ、就職活動に専念しましたが、それがあって成功できたと思います。
  今の社会の状況を見ると、例えば「中国人」というメリットを生かして就職できる可能性があります。しかし私はこれにはあまり賛成できません。というのは、日本人にできないことを自分の強みにして日本社会に浸透しようとしてもおそらく自分の成長はないからです。普通の日本人と同様の社会的実力をつけた上で中国人のメリットを生かして勝負をかけるのが本来のやり方だと思います。要は自分が将来どういう人間になりたいかということです。私は日本で普通の日本人と同様に認められる社会人になりたいと考えました。当然、入社後は長期間にわたって同期や日本人の先輩と競争しなければならないというリスクもあります。しかし私が言いたいのは、自分に自信があるのであれば外国人のメリットなど当てにせず、堂々と日本人と勝負してほしいということです。
  そして、就職活動に限らず、人間には友人知人の力が不可欠です。自分から積極的にアプローチし、信頼し合えるネットワークを作っておくことが大切です。私は三創会という、ハルピン工大、北京理工大、吉林大からの派遣留学生を中心に結成した在日華人交流団体に所属し、メンバーの就職や生活をサポートしています。会社の役員レベルのOBに指導協力していただいたこともあり、ネットワークが留学生の大きな力になっています。
  私が大学院時代にお世話になっていた米山ロータリークラブ・新橋クラブのカウンセラーは長銀の元常務の方で、私は日本社会で成功を収めた方からの有益なアドバイスとエールを頂き、それが自信につながりました。問題は目の前のチャンスを大事にするかどうかです。恵まれたチャンスを確実に活かさなければなりません。奨学金のチャンスは誰にでも平等です。だからこそチャンスに向かって全力で走る人でなければなりません。そこが勝敗の分岐点です。
  就職に関しては、自分がどういう人生観を持ち、将来何で勝負していきたいか、そのため何を身につける必要があるのか個々人の戦略プランを立てること。そして、みながイエスと認める一般常識を身につけることが必要です。特にマナーは人に信頼感を与えるものですから非常に大切です。仕事も生活もつながっています。最後に採用を決定する立場にある人物が自分に好感を持ってくれるかどうかは大きな要因であり、あらゆる分野の人に認められるためには、やはり行動や言動が本心からのものでなければなかなか難しいと思います。


よう しめい 
1977年中国江蘇無錫市生まれ。97年交換留学のためハルビン工業大学より来日、千葉工業大学工学部プロジェクトマネジメント学科に入学。その後、東京工業大学社会理工学研究科人間行動システム専攻にて修士課程を修了後、アクセンチュア株式会社に入社。現在、損保、生保、証券など金融系のシステム構築や業務改善等幅広くコンサルティングを実施中。