王 維 氏
(香川大学経済学部助教授)
学内の相談体制の整備が課題 人材資源として重要な留学生
――留学生受け入れに関する問題点と、その解決の方向性について。
受け入れに関わる問題としては、まず入学手続きの煩雑さがあります。例えば海外大学と交換協定を結んでも、日本人の学生による一方通行の傾向があり、書類審査等に時間がかかってしまうため協定校の学生がなかなか来られません。日本留学試験で優秀な学生かどうかは確認できるようになっているのですから、少なくとも協定校の学生は簡単に入れるようにする措置が必要だと思います。
学内の留学生支援制度の充実も課題です。ある学生が相談をしに留学生課に行くと学部事務室に行くよう言われ、学部事務室に行くと留学生課に行くように言われたような例がありました。学内には相談できるところがあるようでないのです。現状では相談体制の整備は各大学の取り組みに任せられています。日本が本格的に留学生を受け入れ始めてから20年以上もたちますが、相談体制の整備一つとってみてもいまだに統一的な機構はなく、国の姿勢が見えてこない気がします。それは例えば留学生の就職支援に関してもいえることで、今後は出口政策についてももっと考えていく必要があるでしょう。
現在、日本では大企業が採用数を増やしているいっぽうで、地方の中小企業は人材不足に直面しています。留学生は人材資源として非常に重要な存在であり、彼らが最も人材を必要とする地方企業や中小企業に就職することは日本にとって大きなプラスになると思います。
四国ではこの6月に四国華僑華人連合会が発足しましたが、設立趣旨の一つに、毎年留学生のために企業を回って就職支援を行うことを掲げています。このような動きは留学生の就職問題の解決に寄与するだけでなく、日本社会の外国人労働力の受け入れ方や移民社会のあり方を考えるきっかけを提供することにもつながるのではないでしょうか。留学生時代のアルバイトを含め、日本で長く働くということは、ある意味で日本の社会に入り込んで移民になることでもあるからです。
日本社会は現在停滞期にあり、いっぽうで国際化はますます進展しています。日本のためにも、一地方のみならず全国的に留学生人材を遍く受け入れていくためのネットワークが必要です。それと同時に、留学生を通じて外国人の考え方や文化的背景を日本人にも勉強してもらい、日本社会の外国人に対する偏見を根本的になくしていくことも必要でしょう。採用時に国籍で差別せず、日本人と同様に扱うような雰囲気を社会全体で作っていくことができれば、もっと外国人が働きやすい環境になるのではないかと思います。やはり、多様性なくして発展性のある社会を作ることはできないのです。
ワン・ウェイ
1984年遼寧大学卒。1999年名古屋大学大学院人間情報学研究科博士後期課程修了。中部大学・中部高等学術研究所助手、同研究員を経て現職。専門は文化人類学、比較文化論、中国文化。