Top向学新聞今月の人金 春梅さん


金 春梅さん (中国出身) 
(電気通信大学大学院修士課程) 


流体力学で数値解析法研究  日中技術交流にも貢献したい

――流体力学を研究をされているそうですが。
  私は「移動境界問題の数値的解析方法に関する研究」をテーマに研究を進めています。数値流体力学は簡略してCFDといいます。この研究は物体が流体の中で受けている速度のベクトルや圧力など、物理量をコンピューターで計算して、数値的に解析する方法です。

――流体とはどういうものですか。
  たとえば、船が海の中にある場合、船は物体であり、海は水、つまり流体にあたります。この場合、船が受けているいろいろな速度のベクトルや圧力、強度を知りたい場合、工場等で実験し計算する方法と、コンピューターで数値的に解析を行うという二つの方法があります。
  CFDは工場等で実験して計算するよりも、所要時間やコストの軽減といった優位性があるので、現在さかんに研究が進んでいます。
  移動境界問題とは、物体が流体の中で、移動したり、変形したりする問題の総称です。たとえば、船と海を接続しているその境界は固まっていないで、常に変形、移動していますので、その環境条件は数値的に解析するのが一番難しいのです。この移動境界問題は工場や環境・生体の分野で多く存在しています。飛行機や自動車、船などの乗り物の場合にも応用されています。飛行機は周りの空気の流れの中でその圧力が一番重要なのですが、それを調べるのに風洞実験というものがあります。この実験をすると、かなりのコストや時間がかかってしまいます。
  自動車を作るにも、かかる圧力や速度、空気の流れなどをどういう形にすれば一番最適な状態で動けるかということを設計の段階でコンピュータのプログラムを使って数値的に計算するんです。どういう形で一番速いスピードがでるか、抵抗力、揚力とか、どういう力を受けているかを計算予測し、実験値と比べながら研究しています。 
  数値的解析方法でコンピュータを使って高精度で解析するための最も困難な問題は、いかに高精度の「格子」を作るかということです。この「格子」の精度が高くなることはコンピュータの発展に直接関係があります。その中でも「直交格子法」という方法は私の所属している研究室が日本で一番発展しています。自分たちでプログラムを作り、この「格子」を作ります。この研究はもう実用化されていますが、コンピュータの発展、つまり速度、計算、CPUなどがさらに進むに伴い、高精度の数値的解析が可能となります。そうすれば、かなり生活に、工場、および会社にも非常にコストの面などで助かると思います。

――この研究分野で日本は進んでいますか。
  日米英がもっとも進んでいます。中国は機械分野で技術が大分遅れていることを知ってどうしても留学して世界でトップの技術を身につけようと決心しました。日本は世界でも一番発達した国であって機械分野でも大分技術が進んでいます。中国では流体力学は、始まったばかりです。機械の技術分野で国際間の交流に貢献していきたいと思います。卒業してからも働きながらプログラム作りで身につけた知識を活かして、新しい成果を果たすまで頑張っていきたいと思います。また、中国と日本のこの技術の分野での交流では、自分は貢献できると確信しています。日本では、就職して研究した内容を現場で応用し、自分に満足できるまでやっていきたいと思っています。

――後輩へのアドバイスを。
  日本へ来る目的をはっきりさせて、また来る前にどの大学に入るか、どの分野、専攻、研究室に入って、自分がその目的を実現できるかというその可能性をよく調べてから来れば、さらに早く自分の夢を実現できると思います。