海外拠点の拡充が必須
グローバル30に申請22件
文部科学省の「国際化拠点整備事業(グローバル30)」は2009年度の公募を終え、国立15大学、私立7大学の計22大学からの申請を受理した。申請要件は2008年5月1日現在で留学生が300人以上在籍しており、英語による授業のみで学位が取得できるコースを学部・大学院に新たに設置することが必要とされている。なおかつ、海外拠点を1か所以上運営しており、他大学も含めた日本全体の留学生受け入れの促進を図る「ワンストップサービス拠点」(海外大学共同利用事務所)の設置計画も必須であるなど、高水準の設定となっている。本年度の採択件数は12件程度の予定だ。
高い申請要件のハードル
グローバル30は、日本を代表する国際化拠点の形成を支援するために文部科学省が2009年度から始めた新事業で、「留学生30万人計画」の中核をなしている。激化する世界の有力大学間の競争に対応するため、30校程度を選んで集中的に投資する。初年度の予算は41億円が計上されており、各採択機関には年間4億円を上限として補助金を配分する。
世界のトップレベル大学との競争を前提としているため、申請には高水準の実績が要求されている。例えば過去3年間の修士・博士の学位授与の平均件数は340件、科学研究費補助金(新領域研究、基盤研究など)の平均採択件数が130件以上であること。また、2008年5月1日現在の留学生数が300人以上で外国人教員(兼任含む)が46名以上であることなど、いずれの数値も全国の大学の平均値の2倍に設定されている。
また、英語による授業のみで学位を取得できるコースを、学部、大学院にそれぞれ1コースずつ新たに設置する必要がある。
海外拠点については、すでに1か所以上設置してリクルート活動などを行っていることが前提で、その拠点を活用して「海外大学共同利用事務所」を整備するよう求められている。これは、各国における日本留学促進のワンストップサービス拠点となるもので、採択校には新たな拠点整備の〝開拓者〟としての役割が期待されている。
拠点事務所にはスタッフが常駐して日本全体の留学情報や大学の情報を提供し、利用を希望する他大学もサポートする。例えば学生募集のための説明会や、テレビ会議システムを活用した入学審査時の面接、渡日前入学手続きの業務などを拠点内で行うことを想定している。特に中近東やアフリカ、中南米など設置運営に困難を抱えやすい地域への進出は積極的に評価される。申請要件としては、各大学がこの共同利用事務所の設置計画を2カ国以上定めるよう求められている。
グローバル30の実施期間は5年間を想定しているが、期間終了から2020年までは継続的に状況を把握し達成度を確認する。そのため、受け入れ人数については、2020年度までに全学の在籍者数に対する留学生比率を20%程度にまで増やすよう求めている。また、留学生の総数についても現在より1000名以上増やし、かつ全学で2600人以上の留学生数となるような計画を求めている。
これらの条件は、現在の日本の大学にとってはかなりの高水準と考えられる。2008年の大学・大学院等における留学生比率は3・4%にとどまっており、最終目標とされる20%とは大きな隔たりがある。また、2006年度に英語による授業のみで卒業できる大学院は57大学101研究科と、全体の1割以下にすぎず、学部については5大学6学部のみだった。
大学等の海外拠点については、2006年度には96機関が276の拠点を設けているが、主に情報収集と共同研究のサポートを行っているものが多く、留学生受け入れに向けたリクルート活動を行っている拠点は全体の26・4%にとどまっていた。
従来から積極的に国際化を進めてきた一部の大学を除けば、グローバル30に申請すること自体がかなり難しい状況にあると考えられる。実際に今年度申請した22大学のうち約半数の12校は、2005年度から文科省が実施してきた「大学国際戦略本部強化事業」(国際展開戦略のモデルを開発する事業)の採択校で、全学的な国際化体制の整備に何年も取り組んできた大学だった。
ただ、グローバル30の申請条件が明示されたことで、国が考える「世界の大学と競争できる基準」も明らかになり、今後目指すべき大学国際化の方向性と30万人計画実現のための具体策もある程度示されたといえる。
今回提出された事業計画は、「国際化拠点整備事業プログラム委員会」(委員長/黒田壽二学校法人金沢工業大学学園長・総長)において審査され、採択結果は6月末に公表される予定だ。
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