<向学新聞2010年3月号記事より>
日中の留学生交流を促進
単位認定など連携強化
「アジア版エラスムス」視野に (日中大学フェア&フォーラム)
日中の大学の学長・副学長や政府関係者らが一堂に会し、各々の大学の取り組みを学ぶ「日中大学フェア&フォーラム」が、1月29日~30日、東京国際フォーラムにて開催された(主催/独立行政法人科学技術振興機構中国総合研究センター、日本学術振興会、中国留学服務中心)。当日は日本側49大学、中国側38大学が参加。大学の戦略的マネジメントや、留学生及び研究者の交流促進などについて活発な意見交換がなされた。
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フォーラム分科会「大学の国際戦略」では、留学生交流や、大学間協定に基づくダブル・ディグリーの課題などについて議論がなされた。中国教育部国際合作・交流局副局長の于継海氏は、「大学が英語プログラムを開発して学位の相互認定をしやすくし、交流を深める必要がある」と提言。四川大学の石堅副学長は、同大学がヨーロッパの大学院との間で行っている「3+1+1」のデュアルディグリープログラムを紹介。3年で四川大学の学部を卒業でき、修士課程の1年をヨーロッパで、あとの修士1年をヨーロッパの別の国で履修することで3つの学位を取得。最終的にはヨーロッパでの就職を目指すものだ。将来はEUのエラスムス計画(EU加盟国の大学間で共同教育プログラムによるネットワークを構築し学生の流動を高める人材交流計画)への参入を視野に入れているという。
また、中国内における新たな動きとして、大学が海外のパートナー校と協力し、互いに交渉しながら新たなカリキュラムを作り、海外大学が中国に来て共同で学校運営を行っていくような取り組みも始まっているという。
これらを受けパネラーや会場からは、「学んだ後どう活躍できるか出口が見えないと日本には来ない」「日本の大学の強み、国の魅力とは何か」といった質問がなされた。東京大学の小島憲道副学長は、「日本として、大学を超えて単位認定するシステムを構築し、ゆくゆくはアジア版エラスムス計画を立ち上げるべきだ」と提言した。
さらに立命館大学総長の川口清史氏は、「学生の流動化というコンセプトは大事だが、アジアでどのように学生を学ばせていくかというビジョンがまだない」と指摘。立命館大学が大連外国語学院との間で「3+1+2」の形で実施している、短期留学を組み込んだ修士学位プログラムを紹介した。そのうえで、「日中でどういう協力のスキームが可能か検討し、様々なプログラムを各大学が開発する段階に入っている」と述べ、アジアの大学との共同教育の体制作りに取り組んでいくよう促した。
現在の日本と中国の大学間交流協定数は2485で、日本にとって中国はアメリカを超える最大の協定締結国となっている。
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