<向学新聞2010年7月号記事より>
新成長戦略を閣議決定
(政府・国家戦略室)
「リーディング大学院」構築
訪日外国人3000万人目指す
政府の国家戦略室は6月18日、新成長戦略を閣議決定した。経済成長のための21の施策を国家戦略プロジェクトとして定めている。アジア諸国の台頭や国内の高齢化など、日本の課題を新たな成長のチャンスととらえ、需要や雇用の創出につなげる。2020年までに『アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)』の創設や、ヒト・モノ・カネの流れの倍増、医療サービスの国際化や訪日外国人3000万人の達成等を目標に掲げている。
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国家戦略室は2009年9月18日に設置された、総理直属の政策決定機関(担当大臣/荒井聰内閣府特命大臣)。今回発表された新成長戦略は、民主党政権になって以来初めて策定された成長戦略となる。
具体的な施策としては、まず、グローバル人材の育成や高度人材の受け入れ拡大に努める。優秀な海外人材を引き寄せるため、欧米やアジアの一部で導入されている「ポイント制」を導入。入国管理上の優遇措置を与えるほか、現行の基準では学歴や職歴が不足していて在留資格の取得が困難だった専門技術人材についても、ポイント制の活用によって受け入れられるようにする。配偶者の就業や、親族・家事使用人の帯同等も含めて2010年度に優遇制度の中身の結論を出し、早ければ2011年度にも実施することを目指す。
大学については、海外大学との単位互換制度を整備し、留学生と日本人との協働教育を推進する。大学院については、日本が強みを持つ分野を結集した「リーディング大学院」を構築し、世界的リーダーとなる博士人材を国際ネットワークの中で養成する。その中核機関として「国立研究開発機関(仮称)制度」の創設を検討する。また、理系人材がキャリアパスを確保できるよう支援制度を整備。これらを通して、特定分野で世界トップ50に入る拠点を100以上構築する。
いっぽう、観光分野では、「訪日外国人3000万人プログラム」を推進する。今年7月1日から中国人の訪日観光ビザの取得要件が緩和され、企業や政府の中堅幹部などの中間層にまで発給対象が拡大される。これにあわせ、申請を受け付ける公館や取扱旅行会社の拡大をはかり、効果的なプロモーションを実施する。また、医療ツーリズムを促進し、資格を持った通訳案内士以外にも有償でのガイドを認める。これらの施策によって訪日外国人を2009年度の約680万人から、2020年までに2500万人へと増やし、将来的には3000万人を達成する。それによって10兆円の経済波及効果と56万人の新規雇用を生み出すことを目指している。
医療ツーリズムに関しては、日本の強みを活かして外国人患者の積極的な受け入れを行う。そのため「医療滞在」ビザを創設して渡航回数や期間を弾力化し、外国人医師や看護師による国内診療が可能となるよう規制緩和を行う。今後、外国人患者受入れに関する医療機関認証制度の整備などを経て、2012年度からの本格受入れ開始を目指す。
国家戦略室では各プロジェクトを確実に実施するための工程表を定めており、スケジュールに従って進捗状況を管理していく。
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