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向学新聞2010年9月号記事より>


留学生の国内就職減少

(法務省入国管理局統計)

 

中国が1300人の大幅減 
企業は国際展開見据え人材多様化

 2009年に留学生や日本語学校生から日本企業等へ就職するための在留資格変更を許可された件数は9584人で、前年より1456人(13・2%)も減少したことが、7月に法務省が発表した統計で明らかになった。2008年に起きた世界経済危機の影響で採用を手控える企業が増えたためと見られる。

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 国籍別では、中国が6333人で依然トップだが、前年比1318人(17・2%)減少し上位5ヶ国で唯一大幅な変動を見せた。以下、韓国1368人、中国(台湾)285人、ネパール173人、ベトナム161人だった。

 職務内容別では、「翻訳・通訳」が986人減の2731人、「情報処理」が230人減の1010人だった。業種別では、コンピュータ関連が1252人で前年比407人の大幅減(うち300人未満規模の中小企業が268人)。その他、金融151人減、商業・貿易131人減、機械122人減となった。

 2009年は業績の悪化から年間の採用自体を手控える企業も増えた。海外へのアウトソーシングをビジネスモデルとしていたコンピュータ関連企業の場合、アジア諸国の賃金水準の上昇と相まって苦境に立たされたケースも考えられる。いっぽう飲食業は前年比101人増、食品製造業は56人増で、食に関する分野は比較的好調のようだ。

 企業の規模をみると、従業員300人未満の中小企業に就職した者は5893人と全体の61・5%を占めるが、前年比では1130人減少しており、景気により大きく変動する中小企業の採用動向が浮き彫りとなっている。

 学歴別では、学部卒が前年比904人減(4396人)、大学院卒が591人減(2814人)だったのに対し、専門学校卒は53人減(1768人)とそれほど変化がなかった。専門技術や即戦力への安定的な需要があるとみられる。

 日本人と同条件でしのぎを削る一般枠採用の場合、留学生は語学+αの部分でよほどの強みを持っていなければ最前線では戦えない現状がある。東証一部上場某企業の採用担当者は、「日本企業でなぜ働きたいか、何をしたいから当社を選ぶのか明確な人でないと入社しても腰かけ程度でいずれいなくなる」と話す。一般的なスキル以上の強みを企業のニーズといかにマッチングさせられるかが鍵を握るようだ。
 
 いっぽう、企業として未開拓の国の市場を開拓していきたいが、その計画が具体的でない段階でも、中長期のグローバル展開を見据えて留学生を募集するケースが増えている。その場合、留学生の母国との関わりよりも海外経験自体が評価され、勤務地にこだわらず国際的に活躍できるグローバル人材が求められる傾向にある。留学生は採用後に必ずしも母国勤務になるとは限らないため、企業が何を求めているかに合わせて〝売り込み方〟を変えていく必要がある。

 また、企業が海外現地の関心の高い学生を直接獲得しに行く動きも強まっている。ファーストリテイリンググループは世界各国の大学で採用説明会を開いており、日本勤務は無理だが現地で十分活躍できる人材には、現地法人採用の道も用意し人材の多様化に努めている。来日経験がなくとも日本語が堪能な人材は海外現地に数多く存在するため、日本に来ているのに語学だけしかアピールできなければ強みにならないのが現状だ。

 勤務地や国籍を問わないグローバル採用の動きは大手企業を中心に加速している。留学生は「どこに行っても活躍できる」実力を持ったグローバル人材を目指すことで、チャンスが大きく広がる可能性がある。



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